第14話 扉リフォ~ム、せい
その日、事件が起こった。
とある一日の始まり。そう、そろそろあの鬱陶しい小娘がやってくる時間。奴は最近になりまた通い始めたのである。チッ
その日もあの音とともに現れる。
「レンマ大魔王様~」
バコッバキンッ……ボコッ…………カラン
「……………」
「……………」
俺とベルの目の前で横たわる扉。どうやら蝶番がいかれ扉が吹き飛んだ。
なんということでしょう!
もう片方は取っ払われ、常に開いた時と同じ解放感溢れる空間に…………
「扉死んだぁーーーーー」
ベルの喧しい声が響き渡った。
―るせぇバカ
「おお、扉よ 死んでしまうとは情けない」
ベルが吹き飛んだ扉に寄り添い見事な茶番劇を繰り広げる。
―そんなん見せに来たんなら帰れ てか壊したのはお前だ
俺は目を細めて、白い眼差しを向ける。
それに気付かないベルは飽きたのか止めるとその扉を直し始めた。
「いやぁ随分と弱っちぃ扉ですね 根性ないんですかねぇ?」
はぁ困った困ったと声に出しながら直す。
―てめぇが毎回毎回来る度にバコンッバコンッやってるからだ 扉に根性求めるな!
相変わらず口で直接言うことが出来ないのはさておき、扉の劣化に関してはベルに原因がある。
バコンッバコンッと音を立てて勢いよく入ってくるのはミランもたまにあるのだがそれは数少ないし、最近知ったのだがベルの方が勢いが強い。
つまり、全て百歩譲って九割九部、いややっぱり百パーセントベルだ。ベルが悪い。
「これで直りましたかね?」
「…………」
ベルが自慢気に見せるものだから本当に匠になったのかと思ったがそんなことはなく絶句。
付けられた扉(ガムテ)
「ちょっと試しますね」
するとベルは一度部屋から出て行く。
何をするのかすぐに察した俺は止めようとするがもう遅い。
「まっ………」
バコンッ………ペキ………パタン
ガムテで補強された扉は遥か彼方へ。ちなみにこの音はもう片方の扉の断末魔だ。いや心が折れたのかもしれない。
「…………扉失くなっちゃいました…てへ」
―…………ぶちこ――――――――
「よし、リフォームしよう」
「ですね」
魔王である俺は超冷静な判断をした。
取り敢えずベルは器物破損の罪及び、俺の気分を非常に害したのでこの場から追放。代わりに建物の匠、アルミニオン=アルアドールを召喚。
すぐに駆けつけたアルは扉を見始めた。
「随分派手に逝きましたね」
「直りそうか?」
「そうですね、直すよりいっそ変えてみてはどうです?」
「ほう、例えばどんなものに?」
「例えば…………」
ケース① 開き戸
来るとき
1 「レンマ大魔王様~」
2 ガチャリ
帰るとき
1 「また来ますねー」
2 バダンッッッッッッッ
「よし、これはよそう」
「そ、そうですか では………」
ケース② 引き戸
来るとき
1 「レンマ大魔王様~」
2 スパァァァァン
帰るとき
1 「また来ますねー」
2 スパァァァァン
「これもよそう」
「……で、ですか では………」
「ああ、もう大丈夫だ」
三つ目の提案をしようとするがもう充分だとアルを止める。
「元のやつをより頑丈に取り付けてほしい」
結局のところそれで収まった。
試しにベルが来た時を考えるとどの扉も極めてうるさい。喧しい。
なので余計に新しくするより元の扉を頑丈にしてもらった方がいい。
というわけでこの事件は解決しましたとさめでたしめでたし。
「レンマ大魔王様~」
バコンッ
今日も扉の開く音が鳴り響く。
―るせぇバガ
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