第13話 迷走
―ふふふ、ふふふふふふ
俺は玉座に座り堪えられない笑みをこぼしていた。
わくわくして止まないのだ。気がおかしくなった訳ではない、多分。
アルミニオン=アルアドール通称アルに城内を案内してもらった後、俺はさっそくいくつか仕掛けを用意した。
詳しくは後々に勇者がやって来た時の楽しみに取っておくが考えるだけで笑いがこぼれる。
―あーあ、早く来ないかな
呑気に玉座の背もたれに寄りかかり時が過ぎるのを待っていると扉が勢いよく開かれる。
バコンッ
相変わらずうるさい音である。
何事?と背筋をピンッと伸ばす。
入ってきたのはミランであった。
「た、大変です!」
「…………何事だ」
あまりの慌てように少しビビり、間を開ける小心の魔王だが気にするな。
そんな事にも気にせず話を続けるミラン。
「ゆ、勇者が…………」
―おお、勇者が………なに?どうしたん?
「ゆ、勇者が…………森で彷徨っています」
―何だと!?それは大変だ!!
一大事な事件に俺は大きく目を見開くのだった。
次回 第14話 魔王勇者を助ける!
ではなくて。
―いや勇者よ 何しとんねん
「勇者は迷い始めて丸二日だそうで、部下に見張らせていますが暇過ぎてトランプしている始末」
―勇者よ しっかりせぇ
流石細かい的確な報告にミランありがとうなのだがあまりにも勇者がポンコツだった事にショックだ。
―もうちょっと頑張れよ こう、……えと、まあ兎に角
語彙力の低下が著しい。最近アホと付き合い過ぎたらしい。
―頼むからここまで生きて来いよ
ただただそれを祈る。
「魔王様、部下にたるみが見え始めております 連絡によると『また迷って戻ってくるしいいっしょ(笑)』とのことです」
―おい勇者 下級の悪魔に舐められとるぞ
失笑。
これには流石に笑う事すら出来ない。
勇者が来るのはまだまだ先になるようだ。その前にその森で勝手に死なないかどうかの方が重要だが。
―仕方ない まずは出来る事から始めよう
ひとまず勇者は放置する。
「ミラン、その部下を回収しろ」
「………い、いいのでしょうか?」
その言葉に驚いたミランはいつも通り跪いていたが顔を上げる。
「不服か?」
「い、いえ、ですが魔王様 それでは勇者の見張りがいなくなる、つまり見失いますが」
「構わん そのままいさせて怠慢させるより他の仕事についてもらった方がその部下たちもよかろう」
「さ、左様でございます魔王様 ではすぐに回収へ向かわせます」
「うむ、いつもご苦労だ 近々褒美を用意しよう」
「あ、ありがたき幸せ!」
ミランはそのままノリノリで去っていった。心なしか目を輝かせていたようにも見える。
さて、とにもかくにも勇者はまだまだ先なようだ。
これはあれだ…………。
つまり、何が言いたいのかと言うと
―準備、早すぎた
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