第10話 死なんのだよ

「初めまして魔王様 私は六人の悪魔〈六人の魔神〉が一人、アルミニオン=アルアドール 小さきが故にこの城を知り尽くした者にございます」


「あ、ああ」


 何故かあまり緊張感がない。会う前の緊張はどこえやら。


―こんなに小さいのに〈六人の魔神〉なんだな てか、よく考えて見ると最初〈六人の魔神〉が集まった時五人しかいなかったような気がするのはこいつが視界に入ってなかったからか


 何処から突っ込めばいいものか。


 まず、見た目はザリガニでも想像できるようなアメリカザリカニではない。体は黒く、トゲがあり、なんと言ってもエビと思うくらい小さい。


「何と呼べばいい?」


 流石にアルミニオン、もしくはアルアドールと呼ぶのは少し長い気がする。もしかしたら何かあだ名みたいなものがあるかもしれない。

 そう思い呼び方を聞いてみる。


「どのような呼び方でも構いません 呼びやすい呼び方で結構です」


―え~…………じゃあザリガニて呼ぶぞ?


「皆は何と呼んでいる?」


「皆からは『アル』と」


「では、アルと呼ぼう さっそくだがアルに頼みたい事があるのだ」


と、話を続けようとした時だった。

 扉をバコンッと開けて奴が入ってくる。


「レンマ大魔王様~」


 この無礼極まりない奴の登場である。

 最近はおとなしくしていると思った矢先にこれだ。どうやら災厄は忘れた頃にやってくるものらしい。


 突然入ってきた災厄こと、ベル=リュディヴィーヌである。魔王の仇敵にしてメンタルブレイカー、通称魔王殺し。


 声を聞いただけで俺は泡を吹きそうになる。


「…………一体何事だ 今はアルと会話中だ 要件は後にして…………も……」

 

 後にしてもらえぬか………と言いたかったのだが。


 ずかずかと言いたかった我が物顔で入ってきた災厄、ベルはプチッと踏んだのだ。


 プチッと………


 踏んだのだ。ザリガニアルミニオン=アルアドールを。プチッとまるで虫のように。


「………魔王様?……あれ?」


 足に違和感を覚えたベルは足裏を覗く。


―……おおおおお、ザリガニとは言え六人の悪魔〈六人の魔神〉が踏まれるとは………何と恐ろしい


 アルには悪いが、アルの心配より俺はベルに戦慄を覚え震えていた。


「あれれ、アルアル?何で足の下に居るの?ぺしゃんこだよ?」


?何アルアルて?何で足の下に居るのって………ぺしゃんこ………


 ベルの暴走についていけなくなる俺は思考停止する。


 しかし、何処からともなくアルの声が聞こえてくる。


「全く、ベル踏むでないぞ何度言ったらわかるのだ」


―え?何回も踏んでるの?


 その声よりベルが何回も踏んでいる事に意識が持っていかれているのは秘密。


 いつの間にかアルはベルが踏んだアルの亡骸の隣にハサミを掲げ見上げていた。


―おお!?


「これはみっともない所を失礼致しました 実は私、最初はただのザコザリガニの魔物だったのですが私の特性が災いしたのかこのように残機があれば生きかえるのです!」


 そんなことを言いながら潰された自らの亡骸をむしゃむしゃと食べ始めた。


―おお、おおお、おお!?


 語彙力が低下したのは置いといて、


「更にこうして死んだ自分の身を食べることにより以前より強くなるのです そうしている内に六人の悪魔〈六人の魔神〉へと登り詰めました」


 こんな所にとんだ伏兵がいた。

 見た目はザリガニなのにもはや最強候補の特性を持つ者がいた。


―おい勇者ヤバいんじゃないの?てか残機ってなに?お前マ○オだったん?


 特性とはおそらくスキルの事だろう。


 もはや最強はアルなのではないかと悟った魔王であった。





 スキル『残機』

 ・死ぬと1マイナスされ、死んだ所から一番近い安全な所へ生き返る。残機の上限は不明。マンマミーヤ。


 スキル『自らの補食』

 ・自分を対象に補食することでその補食対象より少し強くなる。スキル『残機』の後天的なスキル。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る