第9話 どこだ!?って探してる時は意外に身近にアル
魔王平和でいこうぜ大作戦、改め最高の勇者とバトッちゃうぜ大作戦を開始したわくわくが止まらない魔王―レンマです。
その良案を思い付いた俺はさっそく準備へ取り掛かっていた。
その準備とは―城内部の見直し、である。
父の話ではそれ以前から勇者とは戦っていないらしくこの城には特に迎え撃つものが全くと言っていいほどない。
だからその準備である。
とは言え勇者はまだ出発したばかり。そんなすぐには来ないであろうが。
それでもやりたかったのだ。
―さて、この城の造りはあまり詳しくないからな どうしたものか
ほとんどこの部屋から出ない引きこもりとなっていた魔王にこの城の知識があまりにも薄い。
―仕方ない 誰かに聞くとしよう
この部屋には誰もいないのでどうにか呼び出す必要がある。わざわざ魔王から出向いてもいいのだがそれだと威厳が………。
―……お、この魔法なんていいな
召喚系統の魔法を探していたのだが思いの外、いいものが見つかった。
今度こそは適当に押したりしない。
二度とあんな真似はしない。絶対、そう絶対に………振りではない。
事前に調べてから発動する。
スキル『テレパシー』
・会ったことのある者を対象に脳内の会話を試みる。着拒はその対象に委ねられる。
―まるで声のない電話だな 着拒って………
早速ミランにテレパシーを送る。
耳鳴りのような音を感じた後、ミランが応答する。
『いきなり申し訳ないミラン』
『ま、魔王様!?い、一体これは………』
ミランからは姿が見えない魔王の声に戸惑っているのだろう。慌てる声が聞こえる。
『これは私のスキルであるテレパシーだ ミラン、早速本題に入るがまず私の所へ来てほしい』
『しょ、承知いたしました 只今向かいます』
どうやらこのテレパシーは大きい音なら対象意外でも多少聞こえるようだ。
ミランの応答の後、何やらガシャンッと聞こえたのは聞かなかった事にしよう。何があったか気になるところではあるが………。
そして、ミランはその数分後に駆けつけた。何とも優秀な部下である。
「お待たせいたしました ミラン=リュージェ、只今ここに」
「うむ、わざわざご苦労だった」
上手くテレパシーが伝わったようだ。
「いえ、魔王様 何なりとご命令を」
跪き頭を垂れる。
「この魔王城に詳しい者はいるか?」
「は、それならその者をお呼び致します」
ミランはすぐに去っていく。
その建物に詳しいやつは初対面なので緊張するところ。
ミランはものの数分で戻ってきた。悪い事ではないが仕事が早すぎる。
「お待たせいたしました その者はこちらに」
「うむ、ご苦労であった」
「では、私は失礼します」
ミランが去り、その詳しい者と対面、といきたいところだがその姿が見当たらない。
―む…………むむ?
透明化するスキルでもあるのだろうか。その姿は見えない。
「…………」
しばらく沈黙が続く。
―もしかして俺、遊ばれてる?
と、疑い始めた矢先、何処からともなく声が聞こえる。
「ま、魔王様 要件は一体何でしょうか」
「へ!?」
驚くあまりに何とも間抜けな声が出た。
その声がした方向は自分の前方。何もない所から聞こえた。
目の前を鋭い眼孔で見つめる。しかしそこに何もない。やはりからかわれているのかもしれない。
するとまた、声が聞こえる。
「あ、もう少し下でございます」
言われるがまま下へ。
すると驚くものが目にはいる。
それはちょこんと鎮座するザリガニの姿がそこにあった。
―いや、ザリガニて
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