第8話 魔王、魔王になる
人間たちに謎の宣戦布告take2をかまし帰宅した俺はまた、椅子に頭から突っ込んでいた。
―なんでなん?もう完全に人間敵に回しちゃったじゃん!?
布告した直後には街中が大慌て―
と、思うやん?
移動手段はあの忌々しき罠でもある乱堕橆テレポート。
もう一度あの街へは都合よく行くことは叶わず違う街で宣戦布告したのだが。
そこは何と言っても………まあ、村だったのである。しかも過疎化が進んでいて、いたのはおじいちゃんおばあちゃんが八割九割。
耳が遠くなった老人たちに宣戦布告するというシュールな布告をしたのだ。
正直に言うとtake5までやりましたとさ。
そんな感じで全人類が敵となった今日。
―どぉすんだよ?平和でいこうぜ☆魔王作戦無理やん
心の中で言いながらやはり座り直す。
―もう生きては帰れない いや、帰れるのか知らんけど
ミスを誤魔化せたと思ったらとんでもない方向へと話が勝手に進んでいく。トントン拍子も良いところだ。
そんなときにまた、扉が開いた。
また
「父上!」
「ヤッホー久々だな 話は聞いたぞ なんだも人間たちに宣戦布告したんだってな!魔王っちゃってんね」
―めちゃくちゃ口調軽いな 本当に前魔王かこの人……それに魔王っちゃってるって何?
「俺は無理だよ戦いとか 怪我こえーし」
―うん、こいつ魔王ちゃうわ ただの
しかし、前魔王のチキンっぷりにより戦争は無かったのだと言うとその方が平和でよかったのかもしれないと頭の中でよぎる。
勇者と戦いたくはない。怖いとか、それ以前の問題で。
それでも
それこそ死をもって償うしか―
「しかしなぁ いずれこうなる運命だったし俺の息子が勇者ぶっ飛ばしてくれたら誇りに思うね」
父の言葉が心に引っ掛かる。
前世でもこうだった。結局病気で死ぬ運命だった。
「まあ、頑張りたまえ!」
最初から最後まで他人事の父は手をヒラヒラと振りながら去っていく。
「…………」
無性に悲しくて、それでいて理不尽な運命に怒りを覚える。
―ああ、くっそ……
―もういいもんね!俺、勇者の見方しちゃうから!
心が折れそうになったとき、ふと名案を思い付いた。
勇者にはなれなかった。
憧れた勇者とは敵対。
ならばどうするか?
自分の思い描いた勇者になってもらう。自分は一役買って盛大に、そしてクライマックスで勇者に倒されよう。
これを思い付いたとき、魔王側であるはずの俺はわくわくが止まらない。
―よし、こうなったら最高な舞台にしよう
たった今から魔王として、思い描いた勇者に倒してもらうため立ち上がるのだった。
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