第7話 ワタシハマオウダワッハッハ(棒)

 #魔王ピンチなう in異世界 人界の街


んな事を言っている場合ではない。


 お年頃な俺は『乱堕橆』という厨二病の臭いがプンプンする漢字の羅列に惹かれそれをクリックしてみるとなんとなんと……


 現在人々が暮らす街の中。

 

 急いで帰る方法を探しだし戻ってきた俺はいつも座っている椅子に顔から突っ込んでいた。

 こんな所を見られた時には幻滅されるだろう。


―って今はそうじゃない!


と、思いつつもバッ、と起き上がりいつものように座り直す。


―ふざけやがって 疲れてる俺にとんでもない罠を仕掛けやがって………


 完全な自業自得に怒りを覚える魔王。今の魔王様はご立腹のため器が小さいのだ。


―あんな……あんなカッコ良さげな漢字『乱堕橆』なんて並べられたら気になっちゃうだろ


 本当にどうしようもない理由である。


 しかし、俺にとっての本当の危機はこれからである。




 翌日の早朝。


「おはようございますれんま様ぁー」


 バゴンッと破壊音にも近しい音を立てた扉。

 その後に悪びれもない、あの問題児の登場である。


 だらしなく抜けた声で俺の事を呼ぶのは勿論ベル。


「………どうした?」


 青筋を浮かべるのを必死に抑えながら事を伺う。


 ベルはポケットから何かを取り出した。

 それはくっしゃくしゃになった新聞。どうやらそれに何かかかれているらしい。


 それを受けとるとシワを伸ばしながら開いた。


『人間の街に魔族現る!?侵略の予兆か!?』


―ぶっ!


 吹き掛けたのを心の中で止め、新聞にかかれた大きな見出しにもう一度よく見る。


―ん、んんんん? 俺だよな? ま、まさか


 どうやら昨日特大の罠であるランダムテレポートの誤動作の際に行ってしまった街でバッチリ撮られていたようだ。


「これ、れんま様ですよね?」


「……………ああ」


「何してたんですか?てか、何しにいったんですか?」


 単純に気になっているのか、探っているのか。

 焦りのあまり言葉が出てこない。


 そこへ救世主が現れた。


「ま、魔王様ー!」


 そう、魔王様の救いの神、ミランである。

 堂々と開かれた扉を通過して俺の元で跪いた。


 これがベルとミランの違いである。


「その新聞、お読みになられましたでしょうか?」


「……………ああ」


―ま、まずい 助かったと思ったが……不用意に適当な事を言うととんでもない事になりかねない


 表面は冷酷かつ、冷静な表情の魔王を気取っているが内心は冷や汗ダラダラ。寒気が止まらない。


「まさか―」


―よ、よせ それ以上言うな!


「まさか人間どもに宣戦布告とは!」


「は?」


 思わず素の声が漏れた。

 が、幸い聞かれていなかったようで何事もなく話が進む。


「まさか自らが布告するため私たちの行動を抑止していたとは………流石でございます」


 ミランの目はキラキラと輝き羨望の眼差し。


「………ああ………うんまあそうだけど?」


 パチ。大嘘である。


 そんな都合のいい話にお馬鹿なベルはアホヅラ(偏見)で「そーなのかー!」と勝手に納得し始めた。


―えっと………どゆこと?

 

 なお、一人は置いていかれているが。


「しかし、この文だとやはり無能な人間どもは理解していないのでしょうか?」


 どうやらその無能はここにも一人いるが。


「そんな訳ですからもう一度宣戦布告いたしましょう!今度は私たちもお供します」


―ほほう、よくわからないな!

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