第5話 魔王死す!?
─ああ、頭が痛い
昨日は剣ですらない魔剣を受け取って何もやる気が起きず日付は変わった。
─何だよ錫杖って、名前そのままだし……
あれだけもったいつけといてこの仕打ち。
魔王である事を不安に思う今日この頃。
心身的疲労がピークに達し天を仰ぐ。
そんなことをしていると〈六人の魔神〉の一人が入ってくる。
「魔王様 報告がございます」
それはいつも他五人をまとめあげる悪魔。名前はミラン=リュージェというらしい。
悪魔のに対し人間のような形と美貌。今の俺にとっての癒しはこのミランだけである。
あの憎たらしい小娘(ベル)とは大違いである。………思い出したくない。
「……何事だ?」
「勇者に動きがございました」
─おお、勇者よ いずこへ………
「街を出ました」
そこまで遠くへは行ってなかった。
─報告細かいな あのクソガキ(ベル)より何十倍も心に余裕があるが……思い出したくない。
「………そうか、引き続き監視をしろ くれぐれも見つかるな」
「はい、承知いたしました」
と、ミランが引き下がろうとしたその時であった。
扉が開き一人入ってくる。
奴のお出ましである。
「れんま大魔王様~!報告に参りました」
そう、それは魔王のメンタルブレイカー 通称ベルの登場である。
―や、ヤバい 死ぬ
既に疲れきっているところにベルという存在が現れ、禁断症状が出そうなのを無理矢理抑える。
―冷静さを保つんだ、俺
「………何事だ?」
「勇者が街出ました~」
―うん、知ってる帰れ
とは言わずに……
「たった今、ミランから聞いた」
「あれー?そうなんですか?」
人差し指を顎に当て、わざとなのか素なのかよくわからない反応をするベル。
―人員増やしたんじゃないの?何でこいつまた来てんの?暇なの?
「……ベル、お前の他に報告の人員は増えていないのか?」
「増えました。あれはれんま様のご指示でしたか!?」
妙にその辺は理解が早い。
わざとやっているのか?
「……ああ、そうだ」
「おお!有り難き幸せ!これで毎回階段を乗り降りしなくてすみますね だいぶ疲れが減りそうです」
―ああ、お互い様にな
増えた事実をしり、少しライフが回復。
「伝える事はそれだけか?」
「はい、それだけです」
―それだけで二度と来るな!
「わかった。下がれ」
「はい、しつれーします」
ピュ~と音が成る程の勢いで奥へと消えていく。
それをしっかり、しっかりと見送った後俺は息をついた。
―ふ~、やれやれ。今日はとっとと居なくなった
そして、最も行ってはいけない事をしてしまう。
―これであいつと会う機会はへ……
減るだろう、と言いたかった。いや、思いたかった。
「…………サマー………サマー」
遠くから声が聞こえる。
そう、俺は異世界、いやこの世の全てで禁忌とされている行為、『フラグ』を建築してしまったのだ。
「魔王様、そう言えばですね………」
回復したライフはもう見えない。マイナスまで振り切っていることだろう。
そして俺は異世界に来て、こんなところまで来て[ギ○ス世界記録]を更新してしまったであろう。
速すぎるフラグ回収。
建築途中で回収する男として、いや魔王として。
―ああ、もう止めてくれ。俺の……ライフはもう……ゼ……ロ………
魔王、死亡
死因――精神的疲労
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