第4話 これは魔剣……なのか?
これまでの歴史書から勇者と争う可能性が低いという希望を代償にカオスな配下が通い始めた絶望を知った魔王 れんまである。
─正直もう帰りたい
「魔王様、お呼びでしょうか 六人の魔神ただいまここに」
現在また〈六人の魔神〉と呼ばれる優秀なそれもとても優秀な配下たちが横並びに跪く。
─決して彼らに泣きついた訳ではない そう決して………
「使用人はベル=リュディヴィーヌだけか?」
「はい、左様でございます いかがなさいましたでしょうか」
「あやつ一人では大変だろう 人員を増やせるか?」
「心得ました」
泣きついた訳ではなくベルに労りを持っての相談なのだ。決して遠ざけるためではない。
─いや、ほら 最近はブラックだの企業がどうのこうのって騒いでるじゃん?
「して、我が父はどこに居られる?」
ここからが本題である。先程の事はついででしかない。
「前魔王様は今は食堂におられます」
─何故?
「ご案内致しましょうか?」
やはり優秀なのだ。
「ああ、よろしく頼む」
□□□
「こちらでございます」
案内された場所は何処にでもあるようなまんまの食堂。人間たちと対して変わらない。
長テーブルの一角で何かをむしゃむしゃと頬張る男性の悪魔。
そう、彼が父である。
「居たな 案内ご苦労だった」
何となくこういう上からの礼を言うのは好きではないが魔王という立場上こうすることを許していただこう。
それはさておきようがあるのは俺の父。
この世界は年功序列ではなく代々受け継ぐ形で魔王になるようなので前魔王は父だ。
その父がこの時間に俺を呼んだのは何でも代々受け継がれている魔剣があるらしい。それを俺に受け継がせるとのこと。
また一歩、魔王の姿へと前進するのだ。
「父上 お待たせいたしました」
「え、俺呼んだっけ?」
─ん?俺が間違えてるのか?
聞き間違えか。一応要件を伝えてみると…
「はい、魔剣の譲渡に関してですが……勘違いでしょうか?」
「あ、ああーそれねうん 呼んだわ」
─デスヨネ?よかった さては忘れてたな?
「それで、魔剣とは?」
「ああ、そうだな 場所を変えよう」
─本当に大丈夫か?
疑いを隠せない俺はそのまま父に着いていくのだった。
□□□
「ここだ ここで待て」
城内部のとある宝物庫。金銀財宝が転がるこの部屋はどういう仕組みなのか入れる者が限られているようだ。
─これは魔法か何かなのか?
さっぱりわからない俺は「待て」と言われたので大人しくその場で立ち尽くしていた。
─にしても凄い量の財宝だな。一体何処から持ってきたんだ?
暫く待っていると父が長細い袋を携え奥から戻ってきた。
「待たせたな では、これを授けよう」
「……はっ」
片膝を付き頭を垂れ両手を掲げる。
─おおお!これは勇者の立場だったら完璧だがワクワクするな
ややテンション高めなのを隠しそれを受けとる。
袋から取り出されたそれは予想より軽い。
「では、これをお前に託した」
「ありがとうございます」
「その名も………」
─ああ、どんな魔剣が…………ん?
「魔剣・錫杖だ!」
─杖じゃねーーかーーーーー!
俺はその日、心の中で最大級のボリュームのツッコミを入れたのだった。
どうやら俺は勇者という夢も叶わない挙げ句に魔王としてもやっていけないようだ。
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