第3話 心折られた魔王
転生して早くも一日が過ぎた。
魔王になってから俺は全くと言っていいほどに睡魔に襲われず一睡もすることなく翌日を迎えた。
それが良くも悪くも、と言ったところで二十四時間寝ずに過ごせると言うのはかなり暇である。
しかし今回はそれのお陰でこの世界についていろいろ調べる事ができた。
「…………ふう」
一晩中調べていた事から疲れが出たようだ。あまり実感がわかないが魔王も疲れるようだ。
調べた事を振り替える。
[その1 ステータス]
これは単純な話でゲーム等に個人の能値の基本でもある項目。
魔力や使用できる特技、耐性など細かく記載されていた。
ざっと見た感じ最強と言えるであろうものばかりだった。
まぁ、それはちょっと嬉しかったりする。
[その2 人間と悪魔について]
この世界の歴史を振り返った結果、悪魔と人間はやはりあまり中が良くないようだ。
これと言った戦争や戦いはないがしばしば小競り合いを起こしたりしているらしい。
勇者と戦った記述も見つからない
もしかしたら戦わなくて済むのでは、とよぎった瞬間である。
よっっっっしゃっ
[その3 帰る、または転生元へ戻る手段]
全くもって検討がつかない。
以上
そこで俺は頭を抱えた。
─嘘やん、このまま一生魔王生活?
嬉しい事が無くもないがそれに対するデメリットが大きすぎる。
正直丸一日ここの魔王として暮らしただけで目から涙が………。
その原因は多く存在するがその中でも……
「れんま様~ れんま大王様~」
こいつの存在である。
「れんま大王様!報告です!」
こいつはよくわからん配下であの〈六人の魔神〉よりも階級が下のわりにこうして現れるのだ。
現れる理由は報告係としての務め。
ビシッと敬礼するその配下は見た目はただの少女?なのだが頭には小さな黒い角。
見た目は可愛らしい悪魔だが俺は好みではない(主観)。そして何より馴れ馴れしい。
─それでもって、れんま大王様っての止めろ 閻魔大王様みたいで縁起悪いわ こっちは一回死んでるんだぞ!
と、声に出して言うことの出来ない事をいいことにこうして毎三十分事に現れる。
そう、毎三十分事だ。
気が狂いそうな状況。もはやカオス。
「………はぁー 今度は何事だ?」
「そろそろ私の名前覚えてくれました?」
「……ベル=リュディヴィーヌだったか」
「はいそうです!やっと覚えてくれたんですねよかったよかった」
─そりゃあ毎三十分事に名前聞かされたらな 嫌でも覚えるわ(怒)
「それでベル 報告とは?」
俺は沸々と沸き上がる怒りを抑えながら冷静に話を進める。
こいつの場合はこちらが進めない限り永遠と無駄話が続く。
「はい、そろそろ朝食の時間ですがいかがなさいます?」
「貰おう」
―今回はまだまともなようだ
「なに食べます?サンドイッチでいいですか?」
速攻で前言撤回を余儀無くされる。
─こいつ聞く気あるのか?
またしても怒りを覚える。
しかしここは冷静に。
「構わん」
「了解しました」
再度敬礼し直すとピゅ~、と擬音が鳴るほどの足の回転で出入り口へと駆けていく。
バタンッと勢いよく閉められた扉を見てホッと息を着いた。
─た、助かった この前はめちゃめちゃ話が長かったからな
と、息を着いたのも束の間、
「れんま大王様~ 朝食まだでした(笑)」
勢いよく扉を開いて帰ってきたベル。
─じゃあさっきお前は何しにここへ来た?
ため息が出そうなのを抑え現実逃避一歩手前、上を見上げる。
「ああ、それでですね さっき聞いたんですけど………」
と、また永遠と続く一人話が始まった。
─ああ、前世は平和だった
前世の記憶を思い出し遠くを見つめる。
俺の心の中で何かがへし折れる音がした。
ベキッ。
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