第49話 サキ現る! お願いタヌ子、行かないで!

 「居酒屋ぽんぽこ」と、この件と、訳の分からない信楽焼のタヌキの事で、僕はぐったりしていた。


こんな日はタヌ子のふかふかなお腹に顔をうずめて癒されたい。


タヌ子のご飯も食べたい。


今晩のタヌキ飯は何だろう?


前はコンビニ弁当かスーパーのお惣菜ですましていたのが普通で何とも思わなかったけど、今では家に帰ったら手作りのあったかいご飯が用意されている。


ご飯からタヌ子の愛情が伝わってきて、すごく元気になる。


もう昔の生活には戻れない。


有難さを身に染みて感じている。


サキと付き合っていた時は、ご飯を作ってもらったことなんてなかった。


まあ、仕事で忙しそうにしていたから期待もしていなかったけど。


そんなことを考えながら、いつものようにタヌ子の可愛い笑顔の出迎えを期待してドアを開けた。


するとっ!


サキがいたっ!!!


「サ、サキ~?」


驚きのあまり、声が裏返ってしまった。


「何で? 何で? %$#&*……。」


訳わからないのと驚きと怒りに似た感情で、自分でも何を言っているのかわからない。


サキは昔とちっとも変わらない高圧的な態度でタヌ子に失礼な事を言っている。


俺との別れも無かった事にされている。


サキの攻撃をまともに喰らったタヌ子は、輝くようなフサフサの毛並みが見る見るうちにペタンと張り付いてやせ細ってしまい、あまりの悔しさからか、尻尾を丸めて股の中に挟みこんで震えている。


目に涙が溜まっていくタヌ子。


ダメだ! ダメだ!


俺のタヌ子を傷つけないでくれ!


「何失礼なこと言ってるんだよ! タヌ子はすごく役立つ子だよ! それにどんだけ癒されてるか!」


サキを怒鳴りつけた。


「じゃあ、あんたにとってこの子は何なのよ!」


サキに言われて、してはならなかった戸惑いを僕はしてしまった。


タヌ子のこと大好きだし、一緒にいて楽しいし癒されるし…。


でも…僕にはタヌキにしか見えないし、これは男女の愛と言っていいものなのか…と。


「何…って、…ペット…。」


と、思わず呟いてしまった。

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