第28話

慌てて爪を見た。


エマがネイルを塗った後、落としてもらったんだけど、爪の際が薄っすら赤くなっている!


そんな細部でわかってしまうなんて!


社長ともある人物は、相手のほんの少しの特徴も見逃さないんだ!


改めて一代でここまでグループを大きくした藤堂社長という人物の偉大さを感じた。


しかし、まずいなぁ…。


なんて言ってごまかしたらいいんだろう?


「あ、いえ、これは…その…。」


僕がうろたえていると、藤堂社長は目をつぶって顔を左右に振りながら言った。


「大丈夫だ。何も言わなくていい。私はわかっているから安心しなさい。」


え?


何が大丈夫なの?


「田代君!内田君を招待するから君もついてきなさい。」


藤堂社長が田代先輩に言うと、田代先輩は僕に笑顔を向けて、素早く準備して車を回してきた。

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