第29話

田代先輩が運転して、僕と藤堂社長は後ろの席に座っている。


恐る恐る藤堂社長を横目で見ると、思った通り、こっちをガン見してるぅ~!


「あ、あのぉ~、社長! どちらに向かっているのでしょうか?」


「まあ、付いて来ればわかる。」


どこに行くんだろう?


嫌な予感しかしないっ!



 着いた先は、高級店が多い夜の街だった。


車を降りてすぐ横のビルに入った。


エレベーターに乗り込むと、田代先輩は20階のボタンを押した。


20階に着くまでの間、みんな無言だった。



 入口の横には、「クラブ・デビュタント」という小さな看板があった。


ドアが開くと、女装したおじさんが立っていた。


「選ばれし紳士の社交場へようこそ!」


中に入ると、ハリウッドスターが住む豪邸のようなしつらえで、ガラス張りの大きな窓からは大都会の夜景が広がっていた。


高そうなソファセットが何個もあって、大勢いるお客さんたちは、どこかで見たようなセレブっぽい人がたくさんいた。


そしてみんな男で女装していた。


何なんだここはー!!!

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