第26話


「お久しぶりです。おかげさまでボチボチ頑張ってます。」


田代先輩は「そーか、そーか」と言いながら座って、部下の持ってきたお茶をすすめた。


先輩と会うのは久しぶりだ。


そのせいなのか、先輩は少し変わっていた。


色が白くなったのか?


髪が伸びたせいか?


いや、よく見ると、細部に渡って手入れしている感が溢れている。


ニキビが多かった肌はスベスベだし、手も綺麗だ。


ささくれもない。


ん!


甘皮処理までされている!!! 


僕は、エマのネイル検定に付き合わされているうちに、他人の手がものすごく気になるようになってきたのだ。


もとい、何故だ。


何故だ、田代先輩。


何があったのだ?


「内田、すごくよく出来てると思う。俺としては採用したいんだけど、知ってのとおり、うちの会社は社長の一存で決まるからな~。押してはみるけど…。」


「先輩、大丈夫です。うちの代表からも少し聞いてはいるので。」


田代先輩は申し訳なさそうな笑顔を僕に向けた。


その直後、ドアが勢いよくバタンと空いて、藤堂社長が入ってきた。


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