第13話 タヌ子とデート  いや、タヌキの散歩か?


 今日は休日。


タヌ子は朝から鏡の前で毛づくろいをしている。


もとい、ヘアーセットをしているのだそうだ。


いつも家事をしてくれたり、仕事を手伝ってくれるお礼に、タヌ子の欲しいものを買いに行こうと誘ったのだ。


「どうかな?」


タヌ子は僕の前に立って、クルックルッと回りながら聞いてくる。


毛並みが二割増しフサフサになっているようだ。


あまり違いがわからないにしても、こういう時は誉めておくものだ。


「いいね。かわいいじゃん。」


タヌ子はニコニコウキウキでスキップをしている。




繁華街の並木道を二人で歩いた。


…いや、一人と一匹か?


ビルのガラスに僕とタヌキが仲良く腕組して歩いている姿が映っている。


最近では、この姿も慣れてきた。


「タヌ子、一番欲しい物って、何?」


「金塊。」


即答かよ!。


冗談だと思いつつもタヌ子をチラ見すると、目の奥がギラギラ輝いて、それはそれは悪い笑みを浮かべている。


これは冗談ではなく本気だ…。


「ま、金塊は今度にして…なんかもっと普通な物ない?」


「じゃあ、さすまた! あと木刀もほしい。防弾ベスト、盗聴盗撮器探知機、防犯カメラ、…モーニングスター…まではいらないか。」


どこが普通なんだよ!


タヌ子は般若のような形相で、次々に防犯グッズや武器をあげている。


防犯グッズマニアか?


「タヌ子君…俺のことからかってる?」


タヌ子はぶんぶん首を振っている。


「じゃ、それは今度買っとくから、今日は普通に洋服とか靴とか見よっか?」


「守りは鉄壁にしてよ! じゃ、お言葉に甘えて洋服見に行く。」


嬉しそうにしてるのでホっとした。



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