第12話

「タヌ子、よしよし。」


タヌ子はまだフーフー言っている。


初めはここまで感情を剥き出しにするタヌ子に面食らったが、タヌ子が言っていること、僕はそれ以上に心の中で悪口を言っていた。


僕が自分で認めたくなかった本心をタヌ子が代弁してくれて、何故か心が落ち着いてきて、穏やかな気持ちになってきた。


それと同時に、逆毛を立てて怒り狂い汚い言葉使いをしているタヌキが、無性に愛しくなってきた。


僕はタヌ子のまあるいフサフサのお腹に抱きついて顔を埋めた。


タヌ子はあったかい肉球で僕の頭を撫でた。


「タヌ子ありがと。タヌ子が代わりに怒ってくれたから、怒りが治まったよ。」



サキの言うように、弱音を吐かず、相手を悪く思う前に自分を省みるように努めてきたけど、本当の僕はそんなことが出来るほど大人でもなく立派でもなく、真っ黒い感情を、自分の中に溜め込んでいただけだったんだ。


自分に嘘をついて無理して背伸びしてがんばってきただけだったんだ。


あー、なんか、ありのままの小さくてダメな自分でいられるって、楽だなぁ。



「そいつの頭に脱毛クリーム塗ってきてやろうか?」


「つか、ブラジリアン脱毛してやろうか???」


タヌ子は、どうも毛に執着しているようだ。


「じゃ、ついでに胸に育毛クリームを塗ってきてくれる?」


「まかせといてっ!」


タヌ子はギラギラと目を光らせていた。


いかん、まんざら冗談でも無さそうだ。(汗!)



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