第11話
「ヒロキ、なんだか元気ないね?なんかあった?」
丸々ポッテリフッサフサのタヌキがソファに座っている僕の前のテーブルに頬杖をついてそう聞いてきた。
僕はそんなタヌ子を見て、そのフサフサのあごの下や頭を無言で撫でた。
タヌ子はくすぐったそうにキャッキャッと言っている。
撫でるのをやめると、タヌ子は大きな丸い目でじっとこっちを見つめている。
「…俺は、ダメだなぁ。」
ポツリと呟くと、タヌ子は横に座って僕の頭をナデナデし始めた。
大きな丸い目が心配そうにこっちを見ている。
普段、あまり弱音を吐かないようにしているのだが、タヌ子の大きな丸い目に見守られながら頭を撫でられていると、溜まっている事を吐き出してしまいたくなった。
「タヌ子―。俺さ、仕事ですっごい嫌なことがあって…。」
僕は、堰を切ったように一部始終をタヌ子に話した。
話を聞いたタヌ子は、怒りの炎で燃え上がるような、まるで不動明王のような顔になり、全身の毛を逆立てて叫びだした。
「このクソおやじがぁぁぁぁぁぁーーーーー! 顔もクソならやり方もクソやな!おまえなんか人に会うたびゲリになれ! あーゲリや! ゲリやーーー! クソまみれになりやがれーーーーー!」
タヌ子は世にもえげつない言葉で相手を罵りまくっている。
「しばいたろかわれぇ。きさまの鼻毛全部抜いたろか!!!!」
「タ、タヌ子、もういいから。」
怒りでフーフー言ってるタヌ子の逆立った毛を撫でてなだめた。
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