第10話 癒しタヌキ  この生活、まんざら悪くないかも

このところずっと雨続きだ。


梅雨だからしょうがない。


ドンヨリとした空と同じように、僕の気持ちも沈んでいた。


最近ついてない。


仕事でのがんばりが空回りしている。


しかも今日は最悪だった。


完全な先方の勘違いをこっちの間違えにされて、途中まで進んでいる工事を1からやり直しにさせられた。


イライラするけど、いつまでも凹んでいたらダメだな。


相手がつけいるスキがないようにしていなかった僕も甘かった……って、去年まで付き合っていた彼女によく言われたものだ。



「ヒロキは、詰めが甘いのよ!」


「相手を恨むより、まず自分に非がなかったか反省しなきゃ!」


「自分で選んだ仕事なんだから、がんばんなさいよ!」


「落ち込んでる暇あったらもっと勉強するとか、参考になるもの見て回るとか! 自分を追い込まないと上には上がれないよ!」



サキはとても上昇志向の高い年上の女で、人にも厳しいが、自分には人一倍厳しかった。


がんばっている彼女を見ていると、僕もがんばんなきゃなって思えて、いい刺激をもらっていた。


彼女に誉められたい、バカにされたくないと思って、ひたすら仕事をがんばった。


実際の自分以上に背伸びもしてた。


仕事が出来るバリキャリの彼女だったが、とにかくマイペースで些細なことでお互いよく衝突した。


別れた理由は未だによくわからないが、何か小さなことが原因でケンカになり、


“さようなら。お元気で。”


と、ラインが来て姿を消した。


その後何度か連絡したが返事は無し。


3ヶ月を過ぎたあたりから、別れたんだ、と実感するようになった。


僕にいつもダメ出しする彼女から捨てられるというトドメのダメ出しをくらって、僕はますます自己評価が低くなってしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る