第5話

午前中、二人でパソコンに向かって仕事をしていたが、正午前になって、内田が窓の方を気にし始めて、その後窓の前でしばらく立ったまま、外を見下ろしていた。


「ヒロキさーん。外にめっちゃキレイな人がこっち見て立ってるんスけどー。」


「え、誰?」


「自分、見たこと無いんスけどー。」


俺は席を立って窓の方へ行き、下の通りを見た。


「……内田。キレイって、あれ?」



タヌキがこっちを見上げて立っている。



「う、内田、おまえアレが何に見える?」


「え?何に見えるって、めっちゃキレイな人じゃないッスか!」


「タ、タヌキには、見えない…よね?」


「ヒロキさん、ちょっと何言ってるかわかんないッス。」


タヌキは俺を見つけて、めちゃめちゃ嬉しそうに手を振った。


そうかと思いきや、猛ダッシュでビルの入り口に走っていった。


その直後、事務所のチャイムがけたたましく鳴った。


タヌ子足速っ! 


つかタヌキに見えてんの、もしかして俺だけ???



ドアを開けると、タヌ子はもじもじと恥ずかしそうな笑顔でフッサフサの大きな尻尾をブンブン振っていた。


「お昼一緒に食べられないかなーっと思って来てみたの。」


タヌ子はウフっと笑っている。


「ヒロキさん、俺あとやっとくんで、ゆっくりランチ行ってきてください。」


内田がニヤニヤしながら言う。


「いつの間にこんなキレイな人と…、俺ちょっと今ジェラってます。」


俺の耳元で内田がささやいた。




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