第6話 もぐもぐタイム  タヌ子さんって、グルメだね

 猪突猛進のタヌ子の勢いで、あれよあれよという間にオープンテラスのオシャレなレストランに連れ去られてしまった。


「朝ね~、テレビ見ながらお掃除してたら、ここのお店の紹介してて、いいなー、オシャレだなー、美味しそうだなー、ヒロキと一緒に行きたいなー、と思って、思い切って事務所にお誘いに来たの。」


タヌ子はもじもじそう言っている。


ニッコニコしている。


用意周到、テレビ見た後ソッコー予約も入れていたようだ。


「“シチリア風カジキのインヴォルチーニレモンと香草のソース”でございます。」


ウェイターが料理をテーブルの上に乗せると、タヌ子の丸くて大きな目がもっと大きくなって、スワロフスキーのクリスタルみたいにキラッキラに輝いた。


いただきまーす! と手を合わせて、美味しそうにパクパク食べている。


一口食べるごとに、顔全体で幸せを噛みしめているようだ。


…かわいいな…。


ニコニコしながら美味しそうに食べているタヌキを眺めていたら、なんだかすごく心が和んできて、癒された。


そんなに美味しいのか?


もっと食べろ、タヌ子。


俺のもあげようか?


なんだか愛するペットにエサをやっている気分になってきた。


並木道沿いのオシャレなオープンテラスのレストランで、信楽焼き風の大ダヌキと向かい合ってランチを取る。


考えてみたら異様な光景だが、悪くない。


いや、心地いいとさえ感じてしまう。


僕にしかタヌキに見えてないようだし、もし仮に本当にタヌキだったとしても、この心地よさで回りの目などなんだかどうでもいいような気分になってきた。


「ヒロキ、お腹すいてないの? 美味しいよ。食べて、食べて!」


タヌ子がニコニコ話している。


ニコニコタヌキ、かわいいなぁ。


「ここは、タヌ子がお支払いしますよ。誘ったのタヌ子だし、今日はお給料も入ったしね。」


ん!


お給料?


働くタヌキって初めて見た。


そもそもタヌキが働けるの?


雇ってくれる会社があるの?


…タヌ子、何の仕事してんだ?


そもそも僕はタヌ子のことをほとんど知らない。


「タヌ子、仕事って何やってんの?」


「私…タヌ子、占い師やってます。」


「えーーー! タヌ子、占い師なの???」


「意外? 占い師やってるっぽくは見えないよねーってよく言われるの。」


確かに…。


タヌキの占い師なんて見たことない。

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