第8話
目が覚めると外は明るく、見慣れぬ天井が見えた。
昨日はたっぷり御馳走になり、ほぼ一方的な話を聞きながらヒデヲと酒盛りして、それから借りた部屋へと戻ってまた眠ったんだった。
良く寝てるな俺。以前では考えられない話だ。寝すぎて老けたか?
ぼーっと天井を眺めて考えを巡らせる。
昨日ヒデヲが言っていたことを思い出す。ローン村、モンスター、魔王。
まぁ話の後半はやれ若い頃はハンサムだっただの、息子がどうこうとか明日は何どうするだ、とか言っていた気がするが、おそらく互いに酔っていて何を言ったかも聞かされたかも曖昧だな。
さて、俺の現在状況確認だ。
とりあえず、俺は何者かに線路へ付き飛ばされ、その後この世界へ転移もしくは転生し村の外の草原に倒れるところをヒデヲに発見され、この部屋に運ばれたということだな。
ついでに何故かおっさんになっちまったけど。おう狼中年上等だぜファッキン。
これは最近流行の、現実で死んだので異世界に転生しました的なやつか?
それともここは天国とか地獄かあの世的なやつか。この部屋の外には荘厳な神殿があったりとか、はたまた枯れた大地に溶岩が流れているような状態だったりするのか?
あーでもモンスターとか魔王とか言ってるからな。死後の世界としてもちょっと似つかわしくないし、俺おっさんになってるし。ってことは前者が濃厚か・・・・
枕のすぐ横にはメガネが置いてある。このメガネは以前から俺が使っていたものだ。フレームの内側にある塗装の剥がれに覚えがある。
昨日も確認したがもう一度試しにかけてみる。視界が不明瞭になる。やはり度が合わなかったのですぐに外した。視力が上がっているし身体能力も向上してるのか?
昔の俺はゲームのしすぎで視力が急に下がってしまって絶望したものだ。
これからは必要なさそうだが。
というか、何故服装も年も変わってんのにこれだけはあるんだ…?
ただ、このメガネ以外に俺が俺であった証拠は何もない。
存在の証明…?まあそれなりに思い入れもあるし……それにどっかでなにかの役に立つかもしれない。
このよくわからない世界ではなにが役に立つかもわからない。
持っておくほうがいいように感じた。
よし、いつまでも横になっていてもしょうがない。
……確か、今日は外でヒデヲの手伝いをするって約束をしたな。ほんとは村の案内をしてやりたいところだが、今日中に終わらせたい仕事があると言っていた。
……仕事って表現すると反射的にうっと来るものがあるな。虚無感というか、倦怠感というか。鬱一歩手前だったんだな俺。
だけどボランティアとか就活じゃあるまいし、意識高い系地域貢献張り切りマンみたいな慈愛に満ちた人間でもない。
世の為人の為以上に我が身の為にだ。
まあ、軽い運動みたいなもんだと言ってた気がする。たまには運動もいいだろう。
せっかくだ、心のまま自由にやろう。
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