第6話
「んで、ケンジだっけか? お前さん、村の外で倒れていたんだぜ。
どっからきたよ?」
いきなり核心をついてきたというか、非常に回答の困る質問をされ、スープを飲もうとしていた手を止める。
「……それが、あまり覚えていなくて。どうして私は村の外で倒れていたんでしょう?」
とりあえず先ほど整理した状況を頭の中でまとめてみるが、自分でもわからないことしかないのだ。
こちらの状況が自分でもわからないので適当にはぐらかした感じになってしまった。
「だっはっはっ。自分でも覚えてないとは、こりゃ重症だな? 頭でも打ったか?ちょっと待ってな、いい薬持ってくるからよ」
メアの父親はそう言うとおもむろに席を立ちあがり台所へ行ってしまったがすぐに戻ってきた。グラスを2個持って。
「あらあら。今日もお酒を持ってくるなんて、しょうがないわね」
「いいじゃねぇか。客人がいるんだから盛ったっていいだろう。チヨ、ついでくれ」
「はいはい」
「さけー! パパ今日もおさけー!」
奥さんの名前はチヨか、、、日本っぽい名前だな
チヨと呼ばれた女性が酒瓶を受け取り、グラスに中身をそそいでいく。
ほぼ透明だが薄く黄色のような色味の酒…ちょうど日本酒や焼酎のような色だ
メアの父親はその所作を満足そうに眺めている。口元が若干ほころんでいる。
そういえば、二人の名前をちゃんと聞いてなかったな。
「お二人は、メアのご両親ということですよね? お名前を訊ねてもよろしいですか?」
「おお、俺はヒデヲ。で、こっちが妻のチヨと娘のメアだ。改めてよろしくな。
それと堅苦しい喋り方じゃなくていいぞ。酒を酌み交わせば、俺たちゃもうマブダチってもんよ。だっはっはっ」
「おっ、おお、そういうことなら。遠慮はナシだ」
笑いの勢いに押されてしまったが嫌いじゃない。
気持ちのいい男のようだ。勢いのままその調子に合わせることにした
チヨがグラスをこちらに寄こしてくるのでグラスを受け取ると酒を注いでくれる。
「じゃあ、乾杯だケンジ」
「乾杯」
グラスを軽く当てて乾杯する。キンっという音が居間に響いた。
「んぐっ……、はぁー、気持ちがいいねえ」
なかなか粗々しいアルコール感ではあるが、ほのかな甘みと酸味が口の中に広がる
「あらあらヒデヲさん、一杯目で酔ってもいないでしょうに」
「あぁ、ついでくれチヨ」
「はいはい」
一息に飲み干し、ヒデヲが次を催促している。
「にしても驚いたものさ。普段は村の外には出ないからな。モンスターと出くわしたら危ないったらありゃしないぜ。
村へ定期的に来ている行商人の見送りに偶々ついてったら、草陰に倒れてるやつがいるからよ。目を疑っちまったぜ」
「モンスター?」
「おうなんだい。村の外にいたってのに、まさか今までモンスターを見たことがないのか?」
「ああ、見たことないな。いや、覚えてないだけかもしれない」
ヒデヲが驚いた様子で訊いてくるのでとっさに誤魔化したが、当然現代社会でモンスターなんてゲームの中でしか出会ったことはない。
「あぁ、魔力を持った狂暴なヤツのことをまとめてモンスターって呼ぶんだ。奴らは目に留まったヤツを片っ端から襲うから、気をつけなきゃなんねえ」
「魔力?」
……おお!、モンスターやら魔力やら、ついにファンタジーな単語が並び始めてきたな。
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