第5話

少女は確かメアって呼ばれていたな。


ひとまず自分のほほを引っ張る。目をぐっとつむってまた開く

うん、やはり景色は変わらない。


そのまま軽くストレッチ後、軽く発声してみる。

「あ、あーうん?」


なんか前と違って野太い声になってね?


それからその場にしゃがみ。メアを怖がらせないよう出来るだけ笑って、穏やかに話しかける。


「えっと、メアちゃん?」


きょとんとしていたメアは名前を呼ぶと、こちらに笑顔を向ける。

可愛いやっぱり天使だ。


「うんっ。そうだよ、メアだよー」

「ここはどこだい?」

「ここ? おうち! んーいまはね、メアと、ママと、パパがくらしてるの!」


「いまは」ということは以前は他にも誰かいたということか。

国や町、村の名前などの情報が知りたかったのだが、、、まあいい


「それよりおじさん! ごはんだよ! はやくしたにいこっ」


メアが駆け足で部屋から出ていく。それを追いかけ俺も部屋からでる。

ほぼ真っ暗だが目を凝らすと見えてくる。ドアを出てすぐ横に階段があった。


ダンッダンッダンッと駆け下りていく音が聞こえる。おそらくメアだろう。

したって言ってたしな。


十分に休めたのもあるがそれにしても、心身ともに妙に軽い気がする。

外見が年食ったクセに、元の俺より調子が良いんじゃないか?


そう考えながら髭をなぞる。仕草がクセになってきたな。

暗いのでゆっくり階段を下りていると香ばしい匂いが漂ってきた。

食欲を刺激してくる匂いだ。


「おっ、目が覚めたか。おーいチヨ。客人が起きてきたぞー。たしかケンジっつってたっけか?」


階段を下りた先の部屋に入ると中央にある四角いテーブルの前で、今の俺と同じくらいのおっさんが皿を用意していた。


「まあ、とりあえずは座れって。チヨが作るメシはうまいぞ」


おそらくメアの父親であろうおっさんが席に着く。

俺も促されるままに向かいの席に着く。


「あら、起きましたか。おはようございます。今はもう夜ですけどね。」

「顔色も良くなってどうやら体調は戻ったようですね。」

先ほど見たメアの母親とおぼしき女性が料理を運んできた。食卓にいきわたるように配膳してくれる。


「ごーはーんー!」


メアがどこからか駆けてきて俺の隣の椅子に座る。母親も俺の斜め前の位置に座って手を合わせる。


「ごーはーんー! いくよー! せーのっ」

「「「いただきます」」」

「……いただきます」


完全に流れに身を任せているけど、料理を目の前にしたら空腹を意識してしまった。

とりあえずはいただくとしよう

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