2015年12月

(12月4日)

幸せなストーリーが浮かんできた夜のこと

窓の外では強い風が木々を揺らす

早く書き留めたいと思って

机に向かい 紙に向かって

迷いながら筆を進める

夜の風にシャッターがきしむ

晴れた夜空には星影が静か

ちっぽけな僕に残されたすべはない

仕事も生活も美しくしたい

手元にある物語はもうひとりで歩き始めてる

僕はただ道しるべをたどるだけになってる

夜が更けてゆく

唐突にウィスキーが透明な音を奏でる

いつのまにか外の風はやんだ

自分が本当にこの夜にいるのかわからない


(12月6日)

好きな曲を聴いた時に感じる

きれいな景色を見た時に感じる

一週間ぶりに君に会って感じる

悲しい歌は歌われず

自然は色あせず形とどめ

愛は時間を知らず

強く強くつながる

ビル風にちぢこまっていた街の

大きな四角い箱のすみっこ

小さな点みたいな俺に

からっぽなこころ

温かい水が注がれる

頬が緩む 体が伸びる

大空ゆく鳥を見上げた

いつくしむ気持ち

こんこんと湧いてくる

止めたくはないこの気持ち

言葉にして発したくなる

身もこころも疲れる日常から

振り返らないで進んでいけばすぐ

世界はアクティブな色に塗り替わる

真新しい生活のおとずれ

意味もなく流れていた時が止まる

次に動き出す時には穏やかなメロディー

もう少しのあいだ こうしていたい

余裕のない都会で俺にとって

ずっと求めていた何かが

だんだん輪郭をまとって

とうとうはっきりと見えるようになる

大切な思い出を浮かべた時に感じる

洗練された絵を見た時に感じる

飾らない君のこころに触れた時に感じる

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【詩】東京2015 紀瀬川 沙 @Kisegawa

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