2015年07月

(7月1日)

長く歌を忘れていたような気がするの

ふと止まった交差点

ふいに見上げた木洩れ日

いつだって どこだって

あたしには歌が言葉があったのに

別れ 出会い また別れてから

まるで言葉を知らない子どもみたいに

長く歌うことをする気にもならなかった

空に 森に 海に 声は通ることを待ってる

どんな美しいもの どんな感動的なものを見たって

黙するあたし いつも一人 隣には誰もいない


そんなあたし 歌が 言葉がもつ意味をないなんて

勝手に思って 押し殺してた日々

思いこんで ふさぎこんでた日々

いつだって どこだって

こころはここにあった

出会い 別れ また出会ってから

まるで友達に囲まれてはしゃぐ子どもみたいに

歌って 言葉をつむいでいる

この世界に この空に

またひとつきれいなものを作り出したい

こころの底をもういちど見つめて

あなたもこころを見せて この世界に


(7月4日)

じめじめとした空模様

いつもはすかっと晴れている港も

今日はこんな空模様 白と灰色

遠くのビルも倉庫も

目の前の世界は狭くてぼやけてる

目を凝らしてみても あたしの明日と同じ

真夏はすぐそこ ほら あたしたちに手招き

絶え間ない小雨と湿気の向こう

あなたとあたしの 素晴らしい世界が見えるでしょう

水に濡れたテラスもいずれ乾ききって

もとのいい香りをかもしだす

もうすぐそこの未来

海開きの声が津々浦々に響き渡る頃

みんなの気分は爽快に飛び回る

かわいいカモメとこわいトンビとすれ違って

ちょっとびっくりして また軌道に戻る

明日を待って もう寝ましょう

朝が来て目が覚めれば

小鳥たちの声と朝の風に頬をくすぐられ

あたしは隣のあなたを探す


(7月19日)

梅雨の終わりの34℃

大きな雲と真っ青な空

はるか頭の上で押し合う

南風あなたの肌にまとわりついて

じんわり汗が浮いてる

ふたりの変な雰囲気 天気は何も気づかない

先月からずっと ゆらゆら じわじわ

話していても 笑っていても さわっていても

こころに からだに 言えない違和感

せっかく雨が上がるのに 雲が晴れるのに

あなたとあたしの気持ちは梅雨空のまま

無言で入った海岸通りの喫茶店

くちびると左手にちょっと力こめて

涼しい空気に飛び込んで 席につく

向かい合う あなた 目を合わせない

あなたとあたしのパズル 結局うまくできなかった

真ん中はできたけど すみっこはもう見当もつかない


(7月27日)

ほら 空見上げて

目を突き刺す日の光

目を閉じないで 見つめて

強烈な残像 いつまでも影残しても

あなたの思い出のように

真夏に焼け付く くっきりとしたモノクロ

暑い暑い昼下がり並んで歩いた

水平線の向こう

何があるか確かめてみたい

遠く 空と海の青まじわって

線上に立つウィンドサーフィンの帆

あなたの好きだった 淡いグリーン

もう一度 ここ海の街で逢えたら

そのときはきっと

青空の下であたし素直になれる

あの頃のふたり たちまち

愛し合う心 花びらのように舞い戻る

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