第97話 知羽ちゃんの悩みを探れ 三年前〜 (チビ視点)



 知羽ちゃんの日記に、必ず出てくるのが優って名前の男の子。



 知羽ちゃんの幼なじみで大事な奴みてーだ。



 あと知羽ちゃんは、学校では一人で過ごす事が多いみてーだな。




 優はなんで登下校だけで、学校では知羽ちゃんと話をしないんだ?




 一緒に帰っている訳だし、知羽ちゃんの事を大事に思っているだろうに......。




 知羽ちゃんが学校で辛い思いをしていると思うと、なんだか、優にも、知羽ちゃんのクラスの奴らに対しても腹が立ってきた。





 だけど、知羽ちゃんは、日記には他の人を責める事は一切書いていねーんだ。



 毎回、自分を責めているんだ。




 自己肯定感が低すぎる。




 そんな事ねーよ。



 知羽ちゃんは悪くねーよ。


 もっと自信もてよ。



 その笑顔を見せたら、皆、寄ってくんのに、友達なんかすぐにできんのに。

 


 そう言って励ます事ができたらどんなに良いか......。





 優の奴はなんで知羽ちゃんを放っておくんだ。



 しかもだ、優の奴はかなりモテるらしい。



 知羽ちゃんがどんなに優の事を思っているかも、日記には書いてあった。




 日記を読む事で、知羽ちゃんの優への思いがダイレクトに俺の頭の中に流れてきて、ズキズキと胸がいたんだ。






 俺は日記の書いてあるノートの端っこを口で上手く咥えてページをめくる。



 日記を隠れて読んでいる事を知羽ちゃんに知られちゃ大変だ。



 俺は咥える時、なるべく唾液がつかない様に気をつけた。




 そうして、知羽ちゃんが学校に行っている間、知羽ちゃんの日記を読む事が俺の日課になった。




 だけど日記を読んで、俺の見てない所で知羽ちゃんがどんな辛い思いをしているか、知る事が出来たが、だからって俺に何かができる訳じゃねー。




 何かできる力が備わっていたとしても、それをどんな風に使う事ができるのか俺には分からねー。




 俺は日記から目線を外し俺が横になれる大きめのクッションの上に横になった。




 目を細め窓の方に目線を移すと、ポヤポヤっとした気持ちの良い日の光が入ってきている。




 今日は温かい日みてーだな。




 そう思った所だったのにあっという間に窓の外が暗くなりポツポツと雨が降り出した。




 な、なんだ?


 窓は鍵も閉まっているのに、その窓の隅から雨水が違う液体の様に侵入してきて、部屋の中に入ってきた。

 



 その液体が部屋の中で大きな水の集合体の様になり、それは人型になった。


 目の前には綺麗な男の子が、立っていた。


 よく見ると若い頃の調整人の姿をしている。



 えっ?

 調整人のじーさんか?


 だけど、調整人のじーさんはいつもはこんな登場の仕方じゃねーぞ?


 どういうことだ?




 


『あの知羽と言う少女が、心配なんじゃな』



 その少年の声は少しハスキーで頭に響く様な声。



 だけど、俺にしか聞こえない様な音の様にも感じた。





 見た目は調整人のじーさんの若い時の姿、だけど、調整人のじーさんとは何かが違う、そう俺は思った。




 



 

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