第96話 知羽ちゃんの日記(三年前〜) (チビ視点)
そろそろ本編も気になっているだろうが、もう少し語らせてくれ、本編に戻ったら作者が俺視点を中々出してくれねーかもしんねーからな。
なんて、一度出たからには無理やりにでも登場するつもりではいるがな。
知羽ちゃんも俺をチビと名付けた。
知羽ちゃんからチビと呼ばれる度になんだか懐かしい記憶がよみがえる様な錯覚におちいった。
そう、俺は知羽ちゃんの中に、俺が普通の犬だった時の、ご主人様の魂を感じていた。
確信があった訳じゃねー。
だけど、俺の胸は知羽ちゃんを見ると騒ついた。
知羽ちゃんからの温もりに俺の冷えきっていた心が温かくなってきていた。
知羽ちゃんが好きだ。
それはどういう意味の好きなのか......。
恋、愛、大事な人、かけがえのない人。家族。友達。
好きにも色々ある。
まあ誰かを好きになるのはあたりめーの事だし、それが生涯ずっと一人かどうかなんて分からねー。
俺達の場合、普通は犬に惚れるもんだしな。
まあ、俺は犬にしてはかしこくなりすぎたのかもしんねーな。
知羽ちゃんがご主人の生まれ変わりなのかはまだ、分からないが、とにかく、知羽ちゃんの側にいると、あの色付いた日々が戻ってくる様だった。
知羽ちゃんが笑うと嬉しいし、泣くと、胸の奥が痛くなる。
ずっと、ずっと笑顔でいて欲しーって思っちまう。
調整人の爺さんに頼まれていた事も気にしてはいたし、この世界の変化も肌で感じてきていた。
だがそれよりも知羽ちゃんが最近、元気がなくなってきた事の方を俺は気にしていた。
溜息を吐く回数も増えた気がする。
知羽ちゃんは近所に住んでいる優って奴の事が好きだ。
なんで知っているかって?
秘密だ。
なーんてな。
知羽ちゃんは毎日の様に日記を書いて寝る習慣があったんだが、知羽ちゃんが学校に行っている間、俺はそれをこっそりと読んでいたんだ。
始めはやっぱり、日記は読んじゃ、まじーかなーって思ったんだがな。
日記をよ、元気のねぇ沈んだ様に青くなった顔で書いているのをよ。
後ろから見てるとさ、知羽ちゃんが、無理して笑顔を作って振り返るんだ。
俺を撫でながら辛い顔隠して笑うんだよな。
それにな。
知羽ちゃんの頬を俺の大きな舌でペロリと舐めると、ちょっとだけ塩っぱかったんだ。
くすぐったい、そう言って知羽ちゃんは笑ったけど、泣いていたんだと思うんだ。
俺は知羽ちゃんを笑顔にしてーって思った。
俺は長い事生きている。
ご主人以外に大事な人間を作った事はなかったが関わりのある奴はちらほらいた。
だから俺は言葉を読む事ができた。
まあ読むと言うか吸い取った調整人の力を使って、感じとって理解すると言った方が良いかもしんねーな。
そんな風にして、知羽ちゃんが学校に行っている間、知羽ちゃんの日記を読み、知羽ちゃんがどうして、時折りあんな寂しそうな顔をしているのか俺は知った。
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