第93話 実際の俺の事情② (チビ視点)




 パワーチャージ球体、通称マルちゃんは運命の調整人の持ち物だが、何度か自分で、調整人の中から家出(?)を試みていたみたいだ。



 一番初めは落とされたらしいが、二度目が俺とあった時らしい。



 俺は俺でちょっとした事情があって、寿命が長い事もそうだが、ちょっとした役目があった。



 俺は俺が死にかけた時、今まで無敵だった運命の調整人が失恋で弱っていた時、たまたまそこに居た俺が運命の調整人のパワーをかなりの量、吸い取っちまったらしい。




 知羽ちゃんが運命の調整人の中のモノと出会った時、中の奴がその時も、優に自分のパワーを、吸い取られたと言っていたが......。


 だけど優が吸い取ったパワーは元々調整人が他の人々を調整する為に使う筈だったパワーで、奴の分身である滴のパワー。


 俺が吸い取った力はもっと直接的なもので量もかなりの量だったらしい。




 まあ、波長があったというが、恋愛をした事がなくて、普段自信満々だった調整人、失恋で弱りすぎたんだな。



 完璧なもの程、それを崩されると、一気に壊れたりするものだよな。




 それでだ俺は寿命が伸びて、ちょっとした力が使える様になった。




 と言ったって、元、犬な俺だ、その能力を使って何かできる訳じゃねー。


 犬の時よりは頭はちっとばかし良くなった気がするがな。



 だからこんな風に知羽ちゃんの前で、演技したり出来るって訳だ。




 力が弱くなった運命の調整人、しかし、運命の調整人のしていた仕事は実はとても大事で、大変な仕事だった。



 変わりなんか、なかなか見つかるもんじゃねーらしい。



 で、だ。


 無理やり、上の奴らが上で暇していた奴を運命の調整人の中に入れたもんだから、まー大変だわな。




 運命の調整人の仕事内容。


 それは愛する心、波長があい、大事に思うモノ同士の心を結びつける事が仕事だ。





 知羽ちゃんがいる世界も、知羽君がいる世界も、様々な世界が、運命の調整人に違うモノが入ってしまい、いつも、運命の調整人が行っていた仕事を中のモノも行う事によって、色々な歪みやズレが生じてきた。






 そうだ。



 俺が直接、何かした訳じゃねーが、俺の所為で色々な世界がヤバイ事になっちまった。






 そこで、運命の調整人とちょびっと繋がりが出来た俺の所に、何度か運命の調整人が訪ねて来ていた。



 それは、運命の調整人の中のやつが眠った時に、こっそりとだ。




 マルちゃんを知羽ちゃんに渡したのは運命の調整人の中の奴だから中の奴もねっからの悪でもねーかもしんねー。

 


 まー本当の所は分からんが。




 運命の調整人(現在じーさん)は、出会った当初は自信満々でちょっと嫌な感じだったが、内面の弱い所が増えて少しずつ少しずつ思いやりがある奴に変わっていった。



 年も取り始めた運命の調整人。




 始めは俺の所には愚痴を言いに来ていたのだが、その内、俺に弱い所も見せ始め、あるお願いをしてきた。




『ワシはもう少ししたら、役目を終えそうじゃ、

やっとこの身から解放される。

それは長年孤独に過ごしてきたワシには救いじゃった。


だから実はお前には、感謝しておる。


ワシは平気なつもりじゃった。

完璧なつもりじゃった。

だけど、実はワシはこんなにも弱いヤツじゃった。


心配なのはこの世界の事じゃ、

ワシの中のもの。

今は眠っておるが、ワシもコヤツがいつ起きるか、

いつも、気が気じゃない。


悪いやつと言う訳ではないが、

運命の調整人を引き継ぐには器として不十分じゃ。


もう少ししたらと言ったって、人間の寿命にしたらまだまだあるが、


こんな事、お主にお願いするのも、違うと思うが、



運命の調整人を任せれる器の広い人間を探して欲しい。



探して連れてきて欲しいんじゃ』



 調整人のじーさんはそんな風に俺にお願いを言っていた。



 優に前、知羽ちゃんが眠っている時、説明している時、いかにも突然の偶然で俺達が現れたなんて言っていたが、アレは嘘だ。


 

 まあその話は置いておくとしてだ。

 

 だが、俺はこうしてそのお願い事を聞いてやるつもりも別になかった。



 この世界がどうなろうと、別に知ったこっちゃなかった。



 

 そう、この時は役目と言っても役目とは思っていなかった。



 あの日、三年前の知羽ちゃんが小学3年生だったあの日。




 俺の側に転がってきた球体。



 まー、マルちゃんの事なんだが、落ちた瞬間、マルちゃんは『あっ、間違えた』


 そう呟いていた。



 そのマルちゃんの声に俺はあのじーさん(運命の調整人)が落としたモノだとすぐ思った。



 まさかマルちゃんが自分で調整人の中から出てきたなんてこの時は思わなかった。



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