第91話 いったい何が始まったのかね? (茶子おばあちゃん視点)
悲しそうに笑った女学生の幽霊さんを、痛々しく一筋の涙を流したその女学生を、少しでも笑顔にしたい。
話を聞くぐらいしか思いつかないねぇ。
長い人生生きてきたけど、最近は人との関わりがとんと減ってきていた。
それに、私は元々、ちょっと人見知りな所もあって上手い言葉も出てこない。
私は女学生に寄り添える様にはどうしたら良いか考えた。
とにかくまずは話を聞こうと根気よく待とうと思ったその時、急に周りが明るくなってきた気配がした。
女学生の表情も少し戸惑った様に変化し、ゆっくりと後ろを振り返っていた。
すぐに私の方を向いた女学生はかなり表情が固まってしまっている。
普通にこの表情を見るとちょっとしたホラーなのかもしれないねぇ。
女学生の幽霊さんの格好はびしょ濡れで、体の色も透けているかの様に青白い。
先程、やっと表情も明るくなってきて、少しだけ身体も心も柔らかい色に変化してきた様な気すらしていたというのに......。
今は元の固まってしまい、下手したら冷たくも見えてしまう表情に戻ってしまった。
しかもこの幽霊さん、下手に顔が整っているから余計に、綺麗すぎて怖く見えてしまうかもしれない。
だけど私には分かる。
あの強張った表情は戸惑っているだけ......。
怖がっている?
いや、なんじゃろう?
でも一見怖そうなほど綺麗でも、私には分かる。
この幽霊さんはちっとも怖くはないんじゃ。
今までのちょっとしたやり取りで、私は彼女の優しい人となりを知ったからな。
だけど、どうしたんじゃろ?
後ろに誰か居るのかい?
私はゆっくり彼女が先程見ていた方を振り返って見たんじゃが、そこには驚きの光景が広がっておった。
振り返った所で少し目線を上げたら、そこには数人の方々がフワフワと浮いていた。
その中の一人に見覚えのある顔があって、びっくりしすぎて心臓が止まるかと思ったよ。
か、可奈子?
ど、どういう事じゃ?
フワフワ浮かんでいる白い着物を着た女の子に抱き抱えられた女の子は孫の可奈子だった。
びっくりした私は皺々になっている小さめな手の指で目をこすり、何度も何度も見直した。
可奈子、今朝、普通に学校へ向かったと思ったが?
これは、幻覚なのかね?
可奈子を抱き抱えている女の子、幼い頃死んでしまったもう一人の孫、奈々子が成長した様に似ておるなぁ?
ど、どういうことじゃ?
そんな事を思っておったら、前から走る様な足音がして、また前に顔を戻した。
すると、フワフワした掌サイズくらい小さくてキラキラしたお人形さんの様に可愛らしく羽が生えた女の子が飛んできた。
その後ろから見慣れた太っちょのニャンコと男の子が走ってきた。
私の方に向かってまっすぐ走ってくる。
ニャンコは我が家で、飼っておる飼い猫のブチちゃんじゃないかい?
あのタプタプしたお腹はブチちゃんじゃ。
な、何が始まったんじゃ?
これは幻覚?
現実ならば可奈子は、可奈子ちゃんは......。
驚きすぎて私は心臓が止まるんじゃないかと思う程、びっくりしたが、可奈子に、可愛い孫に何かあったかもしれないと思うと気が気じゃない。そう思い、意識をしっかり持てる様、気合を入れた。
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