第76話 茶子お婆ちゃんを探せ①

 大木の中心部分から上半身だけ飛び出している透明なお爺さん。


 大精霊のジョルジュさんは、知羽君(私)を見てユラユラ揺れています。



「ジョルジュさん、忙しい所をごめんね。ちょっと急いでいたものだから、お仕事中だった?」



 知羽君の言葉にジョルジュさんは和かに笑顔を見せた。



《まあな、ちょっと雨続きで困っている所の、調整をしていてな、かなり離れた所に居たのでな。

ちょっとばかし疲れたがまあ、大丈夫だよ。

知羽坊の頼みは無視できんからな。

まあ、一番弟子に任せてきたから仕事の方も、大丈夫だよ》




 ふぁー、大精霊さんのお仕事はなんだか大変そう。


 知羽君、呼び出しちゃって本当に良かったの?



「うわー、忙しい時だったんだね。

ジョルジュさんもちゃんと、お仕事してたんだね。

って、こんな事、言っている場合じゃないんだよ。


ジョルジュさん、人探しなんだ。

ジョルジュさん達の伝達能力を使って、ちょっと手伝ってほしいんだけど、駄目かな?」



 ジョルジュさんは知羽君の隣をフワフワ飛んでいた妖精さんに目線を向けた。



 ジョルジュさんのいる、木の枝が一本だけ妖精さんの元まで伸び、その葉で妖精さんの頭を撫でている様でした。


 ジョルジュさんを見て緊張している妖精さん、確か名前はレルちゃんでしたよね? レルちゃんは、ジョルジュさんの葉で頭をつつかれていましたが、大人しく目をつぶってジョルジュさんが何かをしているのを待っている様でした。



《なるほど、なるほど、ではその茶子さんという、人間を探しているのじゃな? ええと、ここらの管轄は誰じゃったかな?》



 さすが、大精霊さんですね。


 何をしていたのか、分かりませんでしたが、もう状況を把握しているみたいです。






 ジョルジュさんは、目をつぶって、どなたかと会話している様でした。




《ん? ほう、そりゃ大変じゃな?!》



 突然、ジョルジュさんがそんな大声を上げました。






 えっ?




 どうしたんでしょうか?




《フムフム、ちょっと困った事が起きておるみたいじゃな、茶子さんという人も高齢で心配じゃが、そちらの方は知羽坊が何とかしてみせなさい。


知羽坊なら、大丈夫じゃ、ワシはその茶子さんの自宅の方に行った方が良さそうじゃ》





 え?



 結局、茶子お婆ちゃんは私達で探すんですか?



 大丈夫でしょうか?



《一応、この近くの守護霊や、妖精達にも、声をかけておいたから何かしら、探す手伝いはしてくれるじゃろう》



 そう、早口でジョルジュさんは言うと、木の中に帰っていく様に入っていってしまいました。



 大精霊さんは、もしや、根っこや土を伝って移動しているのでしょうか?




【わかんないけど、ジョルジュさんは頼りになるんだ。妖精達を管理してたりするから、大抵の情報は手に入るし、人探しだってお手のものなんだ。


だけど、急がなくちゃな、妖精さん達や守護霊様達に茶子お婆ちゃんを何処で見かけたかは聞けるけど、それぞれ、自分の仕事が忙しいだろうから、茶子お婆ちゃんを守ってまではくれないと思うんだ】



 そう、私に知羽君は心で説明しながら、ブチちゃんを胸に抱いたまま走っています。


 もちろん、チビよりは軽いですがブチちゃんはニャンコちゃんにしては中々、まん丸で重たいです。



 なんとなくチビが私の心の声を聞いて、拗ねている様に感じました。


 チビ、違いますよ。チビが太っていると言う意味ではないですよ?


 身体が大きいって言っているだけですよ?


 チビは、少し機嫌が治ったみたいで、また尻尾を振り出しました。


 ブチちゃんを抱えてこんなに早く走れるなんて、知羽君は体力も結構あるのだと思いました。



 ブチちゃんもソワソワしてはいますが、知羽君の胸の中で大人しくしています。



 レルちゃんも何だか辛そうに、泣きそうな表情を浮かべ、必死に知羽君の横を、飛んでいました。




 



 

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