第75話 アナタは本当に私ですか?


「急ごう。茶子おばあちゃんを探さなきゃ、ちょっとごめんね」


 そう言いながら知羽君は門構えの側の段になっている所にヒョイッと飛び乗り、後ろからブチちゃんを抱え上げました。



「にゃー、ニャニャン!」


 ブチちゃんは始め、ビックリして知羽君の胸の中で暴れている様でしたが、すぐに大人しくなりました。



「にゃんにゃーん、ニャニャ〜ニャン」

『ニャンだコイツの手は、なんだか気持ち良いニャンと言っているワン』

 そうチビが説明してくれました。


 チビ、ブチちゃんの通訳ありがとね。



 褒められて嬉しいのか、チビの尻尾が嬉しそうにフリフリしているのが伝わりました。


 でも流石、知羽君ですね。

 ブチちゃん、知羽君に撫でられて気持ち良さそうに目を細めちゃってます。



 すごいです。

 動物を大人しくする事もできるんですね。




 今はブチちゃんは知羽君の胸の中で、知羽君に撫でられるのを堪能した後、再びワチャワチャと慌て出しました。


「ニャニャ、ニャンニャー」


『気持ち良いニャー、ってこんな事をしている場合じゃニャイニャ、茶子婆ちゃんを探さなきゃだニャンって言ってるワン』



 チビ、何度もありがとね、私もチビを撫でくりまわしたいです。


『僕も知羽ちゃんに撫でて欲しいワン、散歩にも行きたいワン』



 そうね、無事身体に戻れたらまた散歩行こうね?

 チビ?


 お母さんにも、随分長い時間会ってない気がする。


 私の身体は眠っているんだよね?


 時間も眠ったままで止まっているんだよね?


『何度も言っていますが、大丈夫です。この事件を解決出来れば、ポジティブゲージもかなり貯まるでしょう。......僕は折角会えた知羽君とは離れたく無いですが(小声)』



 マルちゃんですか?


 最後の方なんて言いましたか?


 ちょっと聞こえませんでしたよ?



「ブチを撫でている暇はないわ。次は茶子婆ちゃんを探さなきゃ。茶子婆ちゃん今、側に守護霊様がいないから、一人だから、とても、とても危険なの」



 レルちゃんの声は危機迫っています。

 金色の髪を振り乱しながらウルウル目で訴えてきます。


 知羽君はレルちゃんの声に大きく頷きました。



「ジョルジュさん、ジョルジュさん! 聞こえる? 今、忙しいかな?」



 知羽君が突然、そんな事を言っています。



 ジョルジュさん?






 それは一体誰ですか?







 その時です。


 背筋が凍った様に、ゾクゾクする気配がしました。


 私は今、身体は無く知羽君の中で、心だけの状態なので、感覚だけなのですが......。


 道の側にある大木、その木の葉が突風が吹いた様に大きく揺れて、木の中心の空間が波打つ様に揺れました。



 何?



 何が起こっているの?


 ドキドキドキドキ、私の心の鼓動だけ早くなります。


 チビも警戒を強めています。




 そんな中でも知羽君は落ち着いていました。




《知羽坊かい? 呼んだかい? ワシも忙しいんじゃが、まあ良い、どうかしたかい?》




 その木から地面を揺らす程の低い声が響いたかと思ったら、木の中心、歪んだ空間から、上半身半分が飛び出す様に、大きな透明なお爺さんが現れました。



 幽霊さん?



 ジョ、ジョルジュさんと言う方ですか?




 レルちゃんがビックリして目をまん丸にしています。


『大精霊様が、どうしてココに?』




 え?




 レルちゃん今、なんて言いましたか?



 大精霊さんですか?



 妖精さんの仲間ですか?




 大きいですね。



 なんだか大物が出てきましたね。




 知羽君、アナタはかなりすごい知り合いがいるんですね。




 本当にこの世界の私、ですか?




 

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