第69話 平和な日常から一変。家の異変(猫のブチ 視点)
この場所はポカポカ温かい。
顔に少しお日様が当たって眩しいけど、草、木が揺れる音がして、風も入ってきて気持ちが良い。
本当に気持ちいいな〜。
僕はコロンと丸くなったり仰向けになったり、時おり自分のお腹を舐めながら、のんびりとした時間を堪能していた。
僕?
僕の名前はブチと言うのだ。
名前をつけてくれたのは正志君。
正志君は、この家に住む中学生の男の子なのだ。
そんなのんびりと過ごしていたが、大きな声が聞こえてビックリして起き上がってしまった。
声を出したのは秀子ママさん?
えっ、いつもハキハキと喋るけど、あんなキツイ言葉、聞いた事なかったのに......。
僕にご飯をくれる時はいつも優しい口調だし。
僕はまだ眠たかったけど、声が聞こえた方向へと歩いた。
廊下を歩いて行くと、聞こえていた声が、さらに大きくなっていった。
ちょっとだけ開いた扉の向こうからは激しく声が飛ぶ。
秀子ママさん、どうしたんだろう?
機嫌が悪いのかな?
旦那さんと喧嘩でもしているのかな?
扉から、そっと顔を覗かせると、怒られていたのは茶子婆ちゃんだった。
部屋の中に片方の前足を入れた時、すごく、冷えきっている様に感じた。
なんだか、おかしな感じがした。
冷た過ぎて、痛いと感じた。
後、おかしな事にいつも、秀子ママさんや茶子婆ちゃんの周りを飛んでいた、人間なんだか幽霊みたいな人がいなかった。
僕のちっちゃな友達、レルちゃんが言うには守護霊様と言われている人達。
あの人達、僕の事も無視するし、レルちゃんの事も大事にしないから、あんまり好きじゃなかった。
だけど、秀子ママさんの空気が少しピリッとした時、機嫌が悪くなった時とか、その人がそっと背中に触れただけで、とたんにママさんの表情が優しく変わるから、嫌いだけど、尊敬はしていた。
あと、茶子婆ちゃんの守護霊様だけは、無口だけど優しかった気がする。
とにかく、その空間には守護霊様も、レルちゃんのお仲間らしい、妖精のやつらも居なくて本当におかしな空間だった。
僕は妖精達も、レルちゃんの事を馬鹿にするから好きじゃなかった。
だけど、僕の大事な家族達を守る為には守護霊様や妖精達が必要だった。
僕は慌てて、どうにかしないとと思い部屋の中に飛び込もうとしたが中に入ったとたん気持ち悪くなったので、すぐに扉の所まで舞い戻り、部屋を出てしまった。
僕は家の中を全速力で走ってレルちゃんを探した。
レルちゃんは、人間のトイレの部屋の隅でいつもと同じ様にちっちゃい可愛らしいホウキで一生懸命掃いていた。
レルちゃんの金色の髪の毛から、キラキラとした汗が流ように落ちる。
だけど、汚らしく見えなくて、なんだか、トイレの空間だけ、綺麗な空気に包まれ、心地良く感じた。
なんだか、一大事なのに、忘れてこの空間でゴロゴロしたくなるぐらい、心地よく感じた。
って、だけど、そんな場合じゃないのだ。
「レルちゃん、レルちゃん。なんだか皆がおかしいのだ。
にゃんか、変なんだニャン、いつも守ってくれてたイケスカナイ感じの人達、ええと守護霊様達と妖精達も居ないんだニャン。
大変なんだニャン」
僕の声を聞いて振り返ったレルちゃんはビックリして目を丸くしていた。
『どう言う事? えっ? 朝、起きた時は皆様いらっしゃったよ? でも、え! ど、とうしよう?』
レルちゃんは小さな羽を広げてフワッと浮かび上がった。
『ブチ! 皆の所に案内して! 私じゃ何も、出来ないかもしれないけど、行かなきゃ!』
僕は大きく頷いて、走り出した。
早く走りすぎて、焦り過ぎて、足がもつれてしまいそうだったけど。
走るたびお腹がタプタプ揺れたけど。
ドキドキしてどうにかなりそうだったけど。
あの気持ち悪い空間にまた行くのは嫌だったけど。
走って、
走って、
走って、
走った。
な、何が一体、あったンダニャ。
ドキドキ、ドキドキ、煩いニャ。
僕の心臓、静かにするニャ!
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