第68話 肩身が狭い妖精見習い(妖精レル 視点)
私達妖精は、ニャンコの顔より小さいです。
なので近づかれると少しだけ怖いです。
だけど、ブチは、とっても陽気なニャンコでした。
「ニャ、ニャァニャ、にゃんだ、また小さいのが増えたな。だけど、今回は可愛らしい女の子ニャー。ワシのオヤツのニボシ、食べるかニャ?」
表面的には人間には私は見えません。
たまに、こんな風に私達の事が見える動物がいます。
ブチは見えたみたいです。
「ん? ブチちゃん。今日はよく、鳴くのね。ニボシはいらなかったかい? そんな所に置いて、遊んでいるのかい?」
ブチに声をかけたのは、普通の大人の人間にしては背が低く、子供ぐらいしか身長がないおばあちゃんでした。
あっ、実際、人間にはブチの声はニャーニャニャとしか、聞こえていないと思います。
おばあちゃん、名前は茶子さんといいましたが、背は、床しか見えないんじゃないかと思うぐらい、曲がっていて、足取りも少しヨタヨタしています。
おばあちゃんの後ろにはおばあちゃんの守護霊様らしき方がいました。
その方は軍服を着ている若い男性の姿をしていました。
私の面倒を見て下さっている守護霊様とは別の方です。
『守護霊様、ええと、私はレルと言います。妖精見習いです』
軍服を着た守護霊様は厳つそうなお兄さんに見えました。
今までも、何度も見かけてはいましが、怖くて声がかけれませんでした。
厳つそうに見えますが顔は整っています。
軽くお辞儀をして下さいましたが、名乗っては下さいませんでした。
やはり私は見習いだから、話もしたくないのでしょうか?
この家には他に、この茶子おばあちゃんの娘さん、そのお婿さん、あと、子供が二人居ました。
子供は中学生ぐらいの男の子と小学生ぐらいの女の子です。
守護霊様や妖精さん達は、それぞれ自分の守護対象者を守っています。
この前も言いましたが、距離感はそれぞれなので、すぐ側にいない方もいました。
そんな中、私は、この家の黒いモノの掃除をしようと頑張っていました。
魔法を使えば簡単ですが、私はまだ魔法が少ししか使えません。
私は自分専用の小さなホウキを取り出して、黒いモノを掃きます。
僅かですが黒い淀みは消えました。
消えましたが、ムリムリとスグに小さくですが黒いモノが生まれてきました。
黒いモノも始めは薄いグレーの煙りの様な感じなのですが、気を抜くと、濃い黒色になっていってしまうのです。
グレーの時は簡単に消えるのですが、黒くなると難しくなってきます。
この黒い淀みは色々なモノから生まれます。
ほんの小さな愚痴だったり、たまたま入ってきた霊が影響していたり、だいたいは、笑顔や、綺麗な言葉、優しい気持ちなどで、簡単に人間達が自分で消す事ができるのですが......。
色々なタイミングが外れてしまったり、守護霊様や妖精さんの気持ちなどがズレてしまったりしても溜まってきます。
もちろん、守護霊様や妖精さんはこの黒い淀みを私よりは簡単に消し去る事ができます。
この家の黒い淀みを消す作業は、少量だった為、私が任されていました。
私が頑張って掃いていると、よくブチが私の近くに寄って来ました。
ブチはこの家で、唯一、私の話を聞いてくれる相手。
私の友達でした。
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