第64話 走る! ブチちゃんを探せ!?

 妖精さんはキョロキョロと周りを見ながらもスピードを上げて進んでいます。


 そのすぐ後ろを知羽君が走って追いかけます。



 チビも一緒に走っている気になっているのでしょう。

 私の目の前で揺れています。


 感覚だけですが、私の顎にチビのフサ毛を感じます。

 尻尾も私のお腹辺りに当たます。

 バサバサと振っているのだと思います。






 知羽君は、妖精さんを追いかけ更にスピードを上げます。


 

 何度も言っていると思いますが私は運動が苦手です。



 転びそうになる事が多いから少しスピードを落として走っているという現状だったりするかもしれません。






 知羽君が、走るという事は間接的に私もすごいスピードで走っているという事。



 風が頬に当たります。



 こんなに腕を思い切り振り、テンポも良く、風を切って走る。



 なんて気持ち良いのでしょう。



 次に自分の身体に戻った時、この感覚が残っていたなら、転ばずに、しかも早く、こんな風に自分の身体で走る事が出来るかもしれない。



 妖精さんと知羽君が必死な時に、そんな事を考えるのは不謹慎かもしれませんが、そう思うほど、思い切り走る事は気持ち良かったです。




【知羽ちゃんて呼んでも良い?】


 知羽君?



 急に知羽君の心の声が聞こえたので、ビックリしました。



 はい、良いですよ?



 私は知羽君で、良いでしょうか?


 私の声、聞こえてますか?


 私と喋っていて大丈夫でしょうか?


 転びませんか?


【大丈夫だよ。おおっと】


 言ったそばから、つまずきそうになった知羽君でしたが、ピョンっと飛び跳ね上手く着地しました。




 本当に大丈夫ですか?



 心拍が早くなっている知羽君ですが走る足は止めません。



 妖精さんも心配そうに一瞬、振り返りましたが、知羽君が大丈夫だと分かり次第、ブチちゃんを探すため、進み出しました。




 転ばなくって良かったです。


【俺って、知羽ちゃんの中でかなり、どんくさいイメージなんだね】


 知羽君が苦笑いしているのが伝わりました。




 ち、違いますよ。


 だって、知羽君は私でしょう?


 恥ずかしいですけど私は良く転ぶんです。



【まあ確かに、優ちゃんの前では転びそうになる事が多いかな。優ちゃんの側はなんだか俺、気が緩むみたいだ。


そう言えばさ。さっき聞こえたんだけど、俺の中にもしかして、チビもいるの?



しかも、喋ってる?



すっごく嬉しんだけど。

そのチビは知羽ちゃんのチビ? 

ウチにいる『ちび』とは同じ感じなのかな?



後、知羽ちゃん、敬語止めてよね。

自分に敬語なんておかしいだろう?



話したい事はいっぱいだけど、今は妖精さんを、ブチちゃんを助けないとな。


また後でな】



 知羽君は心でそう一気に喋った後、また集中し始めたみたいで、心の声が聞こえなくなりました。



 大通り、車も多くなってきました。


 スピードも速い車も多くなってきています。



 私達も気をつけなけねばなりません。



 妖精さんもスピードを緩め、フワフワ、キョロキョロと辺りを見渡しています。



 知羽君も妖精さんの後ろについて歩き、注意深く辺りを見渡しています。



 横断歩道の向こう側にある、洋風の家の門構えの上に妖精さんが言っていた特徴に似た猫ちゃんがいました。


 猫ちゃんは落ち着きなくキョロキョロと辺りを見渡していました。



 あの子がブチちゃん?



 まだ、信号は赤です。


 こういう時の時間は中々経ちません。



 近くに行かないとブチちゃんと分からないですよね。



 ニャンコちゃん。



 動かないでくださいよ?



 信号が青になりました。




 妖精さんは進み出し、知羽君も、走り出したい気持ちを抑え、左右を確認した後、ゆっくり、横断歩道を渡り、脅かさない様にゆっくりニャンコちゃんに近づきました。



 

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