第57話 ええと、私は幽霊ではないです。

【お姉さん、俺の中で、さっきから喋っている、お姉さんは誰ですか? なんだかしんどそうですね?

貴方は幽霊ですか?】



 知、知羽君、私の声が聞こえているの?




 私の心の声が、知羽君に聞こえているなんて、全然思っていなかった私は、すっかり慌ててしまってました。


 私があまりに慌てていたので、マルちゃんが説明してくれました。



『うーん。多分、力が貯まった事によって知羽君自身の能力も上がったのでしょうね。

知羽君は人以外にも、動植物、物、色々なモノに優しい。


その事が関係しているのだと思います。 


そんな事を言われても分からないですよね? 






形あるもの全てに、思いが宿っています。



そして、僕達の世界、知羽さん達が亡くなった後に行く、魂だけの世界。


そこには色々な職業があります。



その中で守護霊と言うものがあります。



守護霊をサポートする、精霊というモノもいます。




亡くなった後は、生きてきた間、どの様に生きてきたかで、その魂、心は、まず、裁かれます。


そしてどれぐらい周りに優しくできたか、思い合えたか、生きていた間にどれぐらい、自分を高める事ができたかで、その魂、それぞれのパワーが違ってくるんです。



そのパワーの量で、なれる職業も限られてくるのです。



知羽君は周りにとても優しく、知羽君自体を応援している、守護霊さんや、精霊さんが多いみたいですね。



だからパワーが貯まるのも早く、僕や、知羽さん、チビさんが中に入った事で、刺激を受けて能力が開花したのでしょう。


まあ、僕の声まではさすがに聞こえてないみたいですが......』



 マルちゃん、随分長い説明でしたね。



【お姉さん、幽霊? どうしたの? 成仏できないの? 俺に何か出来る事ある? 】



 違います。


 私は幽霊?


 ではないと思います。

 でもどう説明したら良いのでしょうか。




 知羽君、こんにちは、初めまして。



 驚かせてしまって、ごめんなさい。


【大丈夫だよ。実はそんなに驚いてないんだ。

俺は、よく、人の見えないモノが見えたりする事があるから、幽霊さん? とか、妖精さん? とか、見える事、多いんだよね。



幼い頃は優ちゃんにも(ああ、優ちゃんと言うのは俺の幼なじみなんだけど)、そういう事を話したりしてて、優ちゃんは見えてないみたいなのに信じてくれてたんだ......。


だけど、見えているのが俺だけって気づいてからは、こんな風に、不思議なモノが見えたり、聞こえたりする事は誰にも言ってないんだ】



 え?!



 知、知羽君は幽霊さんや妖精さんを見る事が出来るんですか?



 なんか、本当にこの世界での私なのでしょうか?


 何もできない、地味で面白みもない私と知羽君、なんだか、違いすぎるんですが......。



 私はなんとか、少し辿々しくはなりますが、知羽君に話しかけました。



 男の子と喋るのは優君以外、初めてという訳ではないですが、あまり喋った事がないので、緊張します。



 知、知羽君、私は幽霊ではないんです。


 妖精でもないんです。








 だけど、幼い頃からそういう方達が見えるという、不思議な経験をしている知羽君なら私の話を信じてくれるかもしれないです。






 そうして、少しずつ、少しずつですが私は話始めました。



 



 優しい知羽君は私の経験した信じられない様な不思議な出来事をじっくりと聞いてくれました。



 喋る事が苦手だった私ですが、ゆっくり待ってくれる知羽君の優しさに触れて、硬くなっていた心が解れていく様でした。

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