第52話 知羽君の友達。ミユキちゃん? 違う。ヨシユキ君。
優さんの身体は柔らかいです。
知羽君、優さんの表情にドキドキしているみたいです。
優さんの胸からもトクントクンと音がします。
優さんもなんだかドキドキしているみたいです。
「ワンッ、ワンッ」
どこかからワンコの吠える声が聞こえてきました。
知羽君の心の中で、私と一緒にいるチビがそのワンコの声に反応して尻尾を振っている感じもなんだか私には伝わりました。
そのワンコの声を聞き、慌てた様子で、弾ける様に、知羽君も優さんもお互いに身体を離しました。
「ご、ごめんね優ちゃん。ありがとう」
【優ちゃん、良い匂いがしたな。なんか、ドキドキが治らない。早く学校に行かないと、遅刻しちゃうな】
知羽君は実際には優さんに謝り、心ではそんな風に考えていました。
戸惑っている様子が私にも伝わってきました。
知羽君がチラチラと優さんを見ています。
【優ちゃん、息遣いが荒いな。走らせちゃったもんな。身体、そんなに強くないのに】
知羽君は基本的に明るい性格の様でしたが、優さんの事を凄く心配している感じが伝わってきました。
知羽君の感情がダイレクトに私にも流れてきます。
優さん、身体弱いんですか?
優君は学校も休まないし、病弱なイメージなかったんだけど......。
私もなんだか心配になってきました。
そ、そういえば、不思議な森の空間にいる時、優君、体調悪そうだった。
あの時も顔が真っ赤だったし、上手く喋れない感じだった。
もしかして、見えてない所で、身体が弱かったりしたのかな?
あっ!!!
優君、あの空の上に置いてきちゃったのかな?
ど、どうしょう?
優君大丈夫かな?
私は心配でオロオロしてしまいました。
『あの少年、優君は貴方を追いかけて、今、目の前にいる優さんの身体に入っているみたいですよ。あの少女のオーラが優君が入ってから変わった様に思います』
マルちゃんの声はやっぱり呑気ですね。
優さんは知羽君の声にぎこちない風に赤くなっていた自分の頬をポリポリと掻いています。
そして少し知羽君から目線を外しながら答えていました。
「いつものことよ。知羽君は大丈夫だった? こちらこそ、ごめんなさい。立ち止まっているの、気付かなかったわ」
優さんの声は優君よりは高めだけど、落ち着いた声で優しい口調でした。
【優ちゃん、ちょっと顔は赤いけど、普通に話してくれる。良かった。怒っていた訳じゃなかったんだな】
優さん怒っていた訳じゃないみたいですね。
それならあの表情はずっと体調が良くなかったのかな?
優さん大丈夫かな?
え? でもちょっと待って下さい。
優君がこの綺麗な美少女の中にいるんですか?
優さんが優君だとしても、優君がこの美少女の中にいて、こんな風に優さんの気持ちを体感してるという事ですよね?
私は少し胸がチクッと痛みました。
「優ちゃん、もう、こんな時間だね。急ごう。今ならまだ間に合う。ランドセル持つよ。少し早く歩くけど、大丈夫?」
知羽君は心配そうに優さんの返事を待ちました。
「これぐらい、大丈夫よ。ちょっとぐらいなら走れるわ」
そう言って優さんが早歩きで歩き出しました。
慌てて知羽君も追いかけます。
優さんまだ顔が赤いです。
大丈夫でしょうか?
知羽君が少しだけ走り優さんに追いつきました。
「優ちゃん、ランドセル貸して。持つから」
知羽君が、優さんの目を見て優しく言いました。
【今日はこれだけは譲れないぞ。優ちゃん、まだ顔赤いし。大丈夫って言ってるけど、優ちゃんは無理しちゃう所あるからな】
知羽君はスマホで時間を確認しながら、優さんの反応を待ちます。
始めは嫌がっていた優さんですが、小声で何か呟いた後に大人しく自分のランドセルを渡しました。
知羽君は少し早歩きですが、優さんを気遣いながら、歩きます。
優さんのランドセルも持っていますが、そんなに重くありません。
知羽君もスポーツか何かやっているのでしょうか?
そそっかしい所は、私と変わりませんが、インドアで、運動神経が悪い私とは真逆みたいです。
何とか時間に間に合い、教室に入ったと同時にチャイムがなりました。
「おっ、今日は仲良く遅刻かと思ったら間に合ったね。知羽、早く席着かないと先生、来るぞ」
そうやって話しかけて来たのは誰でしょうか?
ええと、あ!!
美雪ちゃん。
えっ!
美雪ちゃんは男の子?
美雪ちゃんとは昔、小さな頃、仲良かった、優君以外で初めて出来た友達。いや、親友だと思っていたました。色々あって、話さなくなってしまったのですが......。
性別が変わっても名前は一緒なのかな?
「おう。美雪(ヨシユキ)サンキュー。優ちゃん、ランドセル、席に置いとくよ」
そう言って知羽君は席につき、美雪(ミユキ)ちゃんじゃなくて美雪(ヨシユキ)君と話しています。
内容は全然分かりませんでしたがゲームの話をしているみたいでした。
この世界の私はまだ美雪ちゃんと友達なんだ......。
私も本当は美雪ちゃんとまた昔みたいにお喋りしたかった。
美雪君が知羽君をからかい、知羽君は拗ねたような表情を浮かべるけど全然怒っていない事が私には分かりました。
美雪君にも分かっていたみたいでした。
二人して大声で笑い、いつのまにか来ていた先生に怒られました。
だけど二人は笑っています。
私は知羽君を羨ましく思ってしまいました。
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