第45話 ち、知羽ちゃん、違う、違うんだ(汗)(優 視点)
知、知羽ちゃん......。
だ、ダメだ。
俺よ、しっかりしろ。
マ、マルちゃんに話を聞かないと、そう思うのに、思うように身体が動かない。
知羽ちゃんの小さく柔らかい手が、俺の背中にギュッと掴まる度に、小さな、その柔らかい身体が、俺に密着される。
知羽ちゃんと俺はまだまだ子供、小学6年生。
知羽ちゃんの身体はまだまだ、未成熟で、胸の膨みも、まだ、子供用のお茶碗程度だと思う。
あり得ない柔らかさから、頭の中が良からぬ事に支配される。
知羽ちゃんの裸を想像してしまいそうだ。
幼い頃から一緒にいた俺達、本当に小さかった、三歳ぐらいの頃、実は一緒にお風呂に入ったこともある。
その頃ももちろん、知羽ちゃんの事はとても大事だった。
だけど、当たり前だけど、全然意識して、いなかった。
その頃の記憶は曖昧だけど、身体の色、形など、おぼろげには覚えている。
って、そ、そんな場合じゃないだろう、俺!
何とか気をそらそうと、マルちゃんやチビの方を見ようとしたその時、知羽ちゃんが何を思ったか、またとんでもない事を始めた。
俺の背に手を回したまま、自分の身体を横にずらし始めたのだ。
ちょ、ちょっと待ってくれよ。
俺のさっきの一体感を味わった様な妄想は、やはり妄想で、知羽ちゃんから、なんとも思われていない事は分かったよ。
だけど、そうじゃなくても密着しているんだぞ?
お、俺は、小学生と言ったって、れっきとした男なんだそ?
知羽ちゃん? 俺は、あの、ちゃんと知羽ちゃんを守りきれてなかった、弱弱な、俺より、心も成長してしまってるんだ。
知羽ちゃんは、正面から抱きついていたのが、横から抱きつく形になって、ようやく動きが止まった。
俺は知羽ちゃんを支えていない方の掌で口元を覆った。
俺、だ、大丈夫だろうか?
知羽ちゃんに嫌われる様な行動を思わずとってしまうんじゃないんだろうか?
身体が熱かったり、体中、響き渡る心拍や脈とか。感覚が激しくなった事とか、随分慣れてきたというか、なんとか何でもない様に自分自身に言い聞かせてきたけど、知羽ちゃんがこんな調子じゃ、俺は正気でいられるだろうか?
そんな事を思っていたら、マルちゃんが大きく二回溜息をついた。
そして、お間抜けな糸目からいきなり紫色の光線を出し、俺の頭に照らし始めた。
う、うわー?!
いきなり過ぎて避けきれなかった。
あんな呑気な顔をしているから油断した。
俺は何をされたか分からなかったが、思わず、ギュッと目をつぶった。
痛みがくるかもしれないと予想したが、光線を当てられた前と後で、身体の状態に特に変化は無かった。
もちろん、痛みもない。
ホッと息をついていたらマルちゃんがベラベラと喋りだした。
『今、一通り記憶を読み取りました。そちらの少年は知羽さんの幼なじみの笹山 優、そして、そちら死神のムクさん? ですか? に連れられて、と言うか、僕達に着いてきていたみたいですよ?』
マ、マルちゃん、俺が、知羽ちゃんに、軽蔑されない為に、順々に説明しようと思っていたのに。
さらっと、しかもそんな言い方じゃ、さっき俺が思っていた様に、変な風に知羽ちゃんに伝わってしまう。
やばい、やばすぎるよ。
「え......? ほ、本当に優君?」
知羽ちゃんが上目遣いで、俺を見上げている。
恥ずかしそうに、俺に確認する様に、俺の様子を伺う知羽ちゃん。
そんな顔も、か、可愛い。
って、それどころじゃないんだってば。
俺はもう、どう説明して良いか分からなくて、変な風に、半分顔が固まった様な中途半端な笑顔になりながら頷いた。
あーーーー。
俺の馬鹿、説明するチャンスを自ら潰してしまった。
「きゃっ、いやー!?」
知羽ちゃんはそう、叫び声を上げながら、慌てて俺から離れ、チビに抱きついた。
あーーーー、知羽ちゃん。
やはり、軽蔑されてしまったんだろうか?
ち、違うんだ!
た、確かに知羽ちゃんに密着していたのは、た、確かなんだけど、無実だ。
無実なんだ!
俺は本当に、知羽ちゃんを守りたかっただけなんだ!
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