第44話 優君? 本物?! やだ、どうしよう
私の顔に、優君? の息がかかります。
鼓動が伝わってきます。
私も優君? も身体が火照ってきている気がします。
私は、恥ずかしさで、どうにかなりそうでしたが、怖さの方が勝っていて、優君? から離れる事ができませんでした。
でも、やはり恥ずかしさもあって、優君? の真正面から抱きついていた自分の身体を、少し、横にずらしました。
私が動く度、優君? が少しうろたえている様に感じました。
ふうっ......。
これで横から抱きつく形になりました。
恥ずかしさは変わりませんが、真正面よりも少しマシになった気がします。
だけど、優君? は、少し身体を震わし、片方の腕は私の肩に回していましたが、もう一方の手を自分の口元に覆う様に当てています。
私は背が低いので、優君? が、口をパクパクさせたり、眼球を落ち着きない様に動かしているのが見えました。
やはり、こんな優くんは見たことない。
ここは夢か、それとも、きっとマルちゃんがこの優君を作り出したんだ。
そう、私が決めつけ様とした時、マルちゃんが大きな溜息をつきました。
な、何?
そう思った私は、人前で、優君? に抱きついている事に恥ずかしさで顔を赤くしながらも、ちゃんと説明して欲しくてマルちゃんを睨みました。
もう一度マルちゃんは溜息をついた後、マルちゃんの目から紫色の光線の様なもの出て、優君? の頭を照らしました。
優君? はマルちゃんの行動に心の準備もできずにいたのか、驚きすぎたのか、固く目を閉じていました。
何? マルちゃん、何をしたの?
だ、大丈夫? ゆ、優君?
『今、一通り記憶を読み取りました。その少年は知羽さんの幼なじみの笹山 優、そちらの、死神さん、ムクさん? ですか? に連れられて、と言うか、僕達に着いてきていたみたいですよ?』
マルちゃんの言っている事をもう一度、頭の中で繰り返し、この場所に移動する前から今迄の諸々の現象や自分のした行動を思い出し、想像を駆使していたら、一番恥ずかしい答えに辿り着いてしまいました。
この、優君は、本当に正真正銘、私の誰よりも大事な幼なじみの優君?
「え......? ほ、本当に優君?」
私はそーっと、優君? を下から見上げました。
優君? いや優君がぎこちない困った様な、笑ってるんだか笑ってないんだか分からない顔で笑って、小さく頷きました。
「きゃっ、いやー!?」
私は顔を真っ赤にしながら、優君から離れ、隣でプカプカ浮いているチビに飛びつきました。
チビは私に抱きつかれながら、ベロンと私の頬を舐めました。
私はチビに捕まりながら再び優君(本当に優君だったんだ。私、なんてことを)を横目で見ながら、マルちゃんが話し出すのを待ちました。
優君は顔を少し青くして、落ち込んでいるようにも見えます。
『まあ、着いてきてしまったものは仕方ないですね。邪魔はしないで下さいね。では、ココが何処か説明しましょう。場所自体は実はほとんど変わっていません。空間を移動しただけです。並行世界、パラレルワールドって聞いた事、ありますか? ココは先程の世界ととても似ていますが、違います』
マ、マルちゃん、何言っているの?
パ、パラレルワールド? そ、そんな所に私達を連れてきて、どうするつもりなの?
ちゃんと帰れるの?
ポジティブな力を貯めるんだったよね?
どうやって貯める気なの?
『他の人の力を借りようと思いまして』
マルちゃんは、自分の口の下にあるゲージについて再度、優君にも説明していました。
『他人の力ってどうするつもりなのさ。まだこの子達には力が備わってないんだよ? しかも、心の状態じゃ、この世界の人には見えないじゃないか。他人からポジティブの力を貰うなんて......。まさか、他の人の心の中に無理矢理入らせるつもりじゃないだろうね』
綺麗な女性がマルちゃんの話に口を挟み、話をしながら急に慌て出しました。
マルちゃんの先程の話からすると、このお姉さん、し、死神さん?
な、なんで??
さっきは本物の優君が居た事を自覚しただけしか、頭が回らなかったけど、どうして、ココに死神さんがいるんですか?
誰か死ぬんですか?
私はマルちゃんと死神さんの話も意味がわからず、色々な事が怖くなって、チビを抱きしめる力を強めました。
『知羽ちゃん、知羽ちゃん。大丈夫だワン。死神さんは悪いことしないんだワン』
優君が目を丸くしています。
チビが喋っているからびっくりしたんだと思いまます。
チビ、なんで悪い事しないって分かるの?
だって、死神さんなんだよ?
誰かが、死んじゃうの?
もしかして私、死んじゃうの?
それとも、優君が?
や、やだー。
私はチビのモフモフで、肉厚な身体を掴みながら、だんだん自分の身体がなんとも言えない恐怖で、冷えていくのが分かりました。
「ゆっ、優......優、君......、あっ」
もう一度、私が優君に話しかけ様とした時、死神さんが私の言葉を遮りました。
『違うわ、私は頼まれて来ただけ。貴方達をあの世へ連れて行ったりしないわ。それよりマルちゃん、答えなさい。まだこの子達にはパワーはそんなに、貯まってないし、二人とも特別な能力もないわ。どうするつもりなの?』
死神さん、ムクさん? でしたっけ?
怖い人ではないのでしょうか?
ムクさんの勢いに、少し後ろに下がりながらマルちゃんが答えます。
相変わらず、真面目な話をしていても糸目でのんびり口調です。
『そうですね。厳密にはパワーが貯まるまでは、他人の中には入れません。だけど、波長が同じ、この世界の自分自身には入る事ができます』
えっ? この世界にも私が居るの?
どういう事?
私が、私の中に入るって事?
そ、そんな事ができるの?
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