第39話 何でココに優君が? ど、何処から出てきたの?

『では、行きますよ?』

 

 マルちゃんが私の指を握って助走をつけるようなポーズをとっています。  


 何処かに行くのでしょうか?


「ワンッ、知羽ちゃん」

 チビが、私の名前を呼びながら不安そうにこちらを見ています。


 私はチビの腰を持ちました。


 チビの身体は大きいので、腰を持つと言っても私がしがみついている感じです。




 その時にものすごく強い風が吹きました。


 何?



 風の強さに私の服や髪が揺れます。

 チビの毛も静電気の様に逆立ってます。




 マルちゃんが神妙な顔つきで辺りを見渡しています。


 どうしたんでしょう?


 私もつられて周りを見渡しました。



 その時、私の肩を誰かに掴まれた感じがありました。



 私は驚いて振り返りますが、誰もいないです。



 だけど、なんなんでしょうか?



 肩に何かが置いてある様な感触、感覚はあるんですよ。



 振り返っても、何もないんですけど、誰もいないんですけど、何故でしょう。優君の顔が頭に浮かびました。

 優君に触れられている様な錯覚がある気がしました。



 何度も後ろを振り向きますが、誰もいません。


 




 どういう事?




 私の妄想が実際の感覚になるとか、そういう事でじゃないよね?



 なんだか、ドキドキしてきちゃったよ。  




 これもマルちゃんの仕業なの?



 



 私の肩にある(何も見えないけど)掌らしきものの感触から、ドクドクと脈を打つような音も聞こえてきました。


 やだ、ドクドクとする音が私にも響いてくる。


 



 もう一度、振り返ってみた時に、一瞬、おデコに小さな風が吹いた様なくすぐったい様な感覚がありました。



 な、何? 風が、小さな風が私のデコに当たって、くすぐったいよっ。



 


 何だったの?


 くすぐったかった......。


 





『気のせいですかね? まあ良いです。行きますよ?』




 マルちゃん、やっぱり何処かに行くの?



 そう思っていたら、マルちゃんは私の指を握ったまま、すごい速さで走り出しました。



 走り出したと言っても空中です。

 

 だけど頬や足、肌が出ている部分に風を感じ、走っていると言う表現がしっくりくるのです。



 私の腕はチビの腰を持っています。


 チビも一緒に移動していますが、重みは感じません。


 マルちゃん、すごい力です。


 私の肩に乗っている掌の感覚も重みはそんなに無いですが、一緒に移動している様に感じます。




 どこに向かっているの?



 怖い。



 そう思う筈なのに何故か私はワクワクしていて、いつもの自分では無い様なおかしな感覚でいました。



『到着しました』



 マルちゃんがそう言いながら自分の額の汗を拭く様な動作をしました。



 汗は一滴も出ていない様にも見えます。


 

 ガクンと私の肩に重みを感じました。

 私はもう一度振り返ると、私の手より少し大きくて、健康的な色の掌が現れ、掌から腕、顔といった感じで、ユラユラと人の形ができてきて、私は目を見開き、固まりました。



 私の額のすごく近い位置に、優君の顔あるんです。


 形成された人型は優君でした。



 何でココに優君が?

 ど、何処から出てきたの?


 だ、だからまた、ち、近いんだってば。



 ドキドキドキドキ。


 私の心拍はまた、身体が何処かおかしいと思ってしまうほど早く動いています。


 身体も沸騰した、ポットの様に熱くなります。



 マルちゃん、まさか、私をポジティブにさせる為に、優君を具現化させたのでしょうか?



 優君の顔は耳まで真っ赤です。 

 優君、どうして、そんなに赤い顔をしているの?



 優君の背後に、誰か知らないお姉さんが立っていました。



 青いオーラを放つその女性は線が細くて、綺麗でした。




 誰? 優君、その人、誰?


 

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