第34話 何これ、どういう事? マルちゃん一体、何をしたの?

 気がつくと私は自分の髪が後1cm上に上がると天井に当たると言う所まで浮かび上がっていました。


 私は慌てて、その場でバタバタと足を左右に動かしますが、空気を蹴ると言った状態。


 私はビックリしてジタバタしていましたが、天井には頭は当たらず、変な感覚ですが、透けてしまうといった状態です。



 私は下を向くのが怖かったですが、家のアパートは天井がそんなに高くありません。

 

 目線をちょっと下げた所にはベッドの上で私の身体が横たわっているのが見えます。

 私に寄り添う様にチビも私の横で目を瞑っています。



 私は血の気が引く様なゾッとした感覚を味わいました。



 な、何? どういう事?


 わ、私の身体がそこにある。


 じゃー、私は何?


 これはまた夢?

 それとも、これが噂の幽体離脱?



 背中にちょっと温もりを感じ、ちょっとだけ後ろを振り返ると私の真後ろに一緒にチビも浮かんでいました。

 

 チビは怖がる様子も無く、前足、後ろ足をぶらつかせてはいますが器用にゆっくりと尻尾を振っています。


 下にもベッドの上に私の横に目を瞑ったチビも居ます。


 チ、チビまで幽体離脱??



『慌てなくても大丈夫ですよ』


 私の顔の真横で、聞き慣れてきたノンビリ声がしました。


 私の横にはポワポワと、糸目のマルちゃんが浮かんでいます。


 透明な球体なままですが、小さな細い手足が生えています。


「マ、マルちゃん、これはどういう事なの、一体なにをしたの」


 私の慌てた声に、反応したのか、チビが前足を片方だけ私の肩に乗せました。



 チビの肉球を肩に感じます。

 チビは透けないんだ?



 チビが私の頬をベロンと舐めました。



 なんだか、僕が側に居るよ?


 そうチビが言っている様に感じました。



 マルちゃんが、ポワポワと淡い光を放ち私の目の前まで来ました。



『ちょっと心と身体を切り離させて貰いました。死んだ訳じゃないから大丈夫です。ビックリさせて、ごめんなさい。ポジティブな気持ちを、ネガティブな知羽さんがどうやって貯めるのか、僕も色々考えました。それでですね。僕には結構色々な事ができるのですよ。まず、こうやって心と身体を引き離す事ができます。そして、知羽さんの協力があれば知羽さんの力を引き出す事も可能です』



 ポワポワと私の目の前で癒しオーラが出ているかのような光を放ち、浮かぶマルちゃん。



 真剣な話をしているんだろうけど、なんだかその空気感が温かく和んでしまう。



 ちゃんと話を聞かないといけないんだろうけど頭を撫でたくなってしまう。


 結局、マルちゃんは何を言いたいんだろう?



 こんな事をしてどうしようというの?



 私、お風呂に入らなきゃなんだけど。


 マルちゃんは私の身体と心を引き離したって言ってた。

 だけど、死んでいる訳では無いから大丈夫とも。

 私の身体は表面的には寝てる様に見えているんだろうか?


 お母さんに、パジャマにも着替えないで、布団もかぶらないで、寝たと思われるんだろうか?

 電気、消してない事も怒られてしまう。



『意外に図太いですね。普通はこんな状況に追いやられたら興奮して言い返すか、不安がると思っていたんですが......』



 不安だよ。


 なんなのと思うよ。



 だけどね、マルちゃんがここにいて、こんな不思議な現象が起きている。 


 という事はだよ。

 今日の散歩中の、あのドキドキ、優君との急接近、あれも全部、現実だったって事だよ?



 あの森の中の様な不思議な光景、キラキラな光、全部、本当にあった出来事だったんだ。



 私はあの時の事を思い出して、今の状況も忘れてまた、ドキドキしていました。

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