第31話 すまないが、ワシの話をちょっと聞いてくれるかい? (運命の調整人 視点)
ワシは、皆、それぞれ持っておる繋がり、心の動き、時期、色々な事を調整する、運命の調整という仕事をしておる。
ワシはその中でも、この地球だけが区分になっておって、だが、この地球でも一つではない。
パラレルワールドとでも言うのかのう。
沢山の世界が存在している。
並行世界の人々はそれぞれの世界の人々とは違う人物だが、影響しあっていて、全くの他人という訳ではない。
まあ、ワシには多くの仕事があると言うことじゃ。
若い頃はワシも結構パワーに満ち溢れておって、そんな膨大な仕事も、自分の分身を作りながらこなす事ができていた。
ワシが、この仕事についたきっかけは昔過ぎて忘れてしまったわい。
じゃが、自分が少し手助けするだけで、色々な者達それぞれが少しずつ目に見えないパワーを身につけて進んでいく。
相乗効果の様に広がっていくその様は、見ていて楽しいモノじゃったな。
そんなワシに変化が起きたのはいつだっただろうかのう。
この仕事は孤独だった。
本当は昔は歳も取らなかった。
だけと、なんでも前向きな考え方だったワシに怖いものはなかった。
じゃが、心からの楽しみもなかった様に思うのう。
ある日の事じゃ。
いつもはその調整をするのに、一人一人に執着する事も、注目することも無かった。
それぞれを遠くから差別する事なく見る事ができておった。
何がきっかけだったかのう。
そうそう、私の仕事ととても近しい仕事をしている者に死神と言うのがおってな。
ある時期、人が多く亡くなる時期があっての。
ワシの仕事にも関わっては来るのじゃが、ワシは直接、調整している皆に関わる事はなかった。
じゃが、その時期は死神が忙しすぎて、ピンチヒッターとして、ワシも死神達の仕事を手伝う事になったのじゃ。
死神達は死を迎える者達と、直接近くで寄り添っておる。
死を迎える者達から他の関わる者達との、心のフォローや調整もしておる。
ワシみたいな高みの見物ではなく、直接、人や動物、植物、ありとあらえるモノの、死、直前のものとその周りの人の気持ちに寄り添うのじゃ。
並大抵の仕事ではなかったじゃろな。
そうやって人々の気持ちに寄り添うと情もわく。
じゃが、どんなに頑張っても変えられないものもある。
そんなマイナスの気持ち、言葉はパワーが強く、力をどんどん奪っていく。
じゃから死神はワシよりはかなり寿命が短いし、ワシの仕事と違って人数も多くおるんじゃ。
と言っても人間よりは比べものにならんほど長い寿命じゃがな。
ワシの気持ちの変化と言うのは、まだほとんど話せておらんが、なんだか、すごく、話が長くなってしまったのう。
優と言う名前の少年も、少し疲れた様な目でこちらを見ておる。
ワシの気持ちの変化、それは、ある死神の少女と出逢った事、そこでワシが恋をしてしまった事がきっかけなんじゃ。
なんだか、こんな話は気恥ずかしいのう。
それでな、つまり、ワシ、こんな仕事をしておったくせに、人々の運命、恋、愛情、繋がりなどを調整する仕事じゃったくせに、恋を知らなかった。
まあワシは他のモノと関わる事がほぼなかった事も原因じゃろがな。
そんな変化があり、じゃが色々あって、ワシは今はまた一人じゃ。
じゃがマイナスの感情もその時、知ってしまったんじゃ。
そしてそれにともなって、ワシのパワーはかなり減ってしまった。
ワシは一気に歳をとった。
一気に生き難くなったんじゃ。
話がどんどん長くなってしまうから、途中からは随分、話を省略してしもたが話の意味は分かって貰えたじゃろかな?
実は今、ワシの中には、ワシじゃなく違う存在もいる。
ワシだけではどうにも仕事がこなせず、光の国からのスケットの様なモノがワシの身体の中に住みついたのじゃ。
そのモノの力で今の仕事を補っておるとも言えよう。
そのモノはかなりの女好きでな。
ワシの事も自分の様に思ってしまっておる所もあり、ワシの本来の姿を女性に知られるのを極端に嫌う。
じゃがワシはこの姿にならんと、ワシ自身の気持ちを話す事ができんのじゃ。
ワシは今のこの流れをどうにかして変えたい。
ワシは運命の調整人として、もう相応しくないように思うのじゃ。
誰が、変わりのものを、後継者を育てたい。
そう思っていた時に何故かワシのパワーと波長が合った少年と、どこか懐かしい空気を漂わせた少女、そしてそのワンコがワシの世界に迷い込んできたんじゃ。
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