第24話 知羽ちゃんに何してるの! (優 視点)

 この、見た目が綺麗だけど、どこか変な少年の言っている事は本当なんだろうか?


 運命の調整人?


 



 人は皆、それぞれ、運命の赤い糸で結ばれる相手がいて、だけど、タイミング、心の揺れなどで、解けてしまったり、切れてしまったり、また他の人と繋がれたり。


 そんな事を俺も考えた事がある。


 男なのに女々しいと言われそうだが......。



 なんでそんな事を考えたかって、俺は幼い頃、知羽ちゃんと出逢ったからだ。


 出逢ったと言っても、それはまた意味が違うかもしれない。


 



 知羽ちゃんは俺が幼少期、しっかり意思をもち、行動し始めた時には、もうすでに隣にいて、常に、隣にいた存在。


 兄妹に近い存在と言えばそうだろう。


 だから俺がどんなに知羽ちゃんが大事でずっと側に居たいと思っていても、多分、知羽ちゃんからは俺の事、頼りになるお兄ちゃん、もしくは弟みたいにしか思われていないと思う。


 

 だけど、俺は、知羽ちゃんとの過ごした今までの時間は一日、一日がとても、とても大切で、俺にとってのあの日々はかけがえのないものだと思う。



 知羽ちゃんにはお父さんがいなかった。


 お母さん同士が親友で、知羽ちゃんのお母さんは仕事で忙しい事が多い。


 だから、必然的に、知羽ちゃんは俺の家に一緒にいる事が多かった。


 俺の両親は知羽ちゃんにとっても親がわりみたいな所もあると思う。


 小さい頃、俺は身体が小さかった。

 知羽ちゃんの方が背が高かっだぐらいだ。


 そして、あの時は今ほど知羽ちゃんが、大人しい感じじゃなくて、好奇心旺盛で、いつも、にこにこに、にこにこ笑ってて、お日様みたいに温かい笑顔で本当に可愛かったんだ。


 多分、今もあの頃みたいにニコニコしていれば周りは放っておかないと思う。



 とにかく、俺が身体が、小さかったあの頃、近所にガキ大将みたいに身体が大きい男の子がいたんだ。


 俺は可愛い知羽ちゃんと、いつも一緒にいれて幸せだった。



 あの時は分からなかった。知羽ちゃんを追っかけ回すガキ大将が悪魔の様に見えていた俺だけど、きっとあの男の子も知羽ちゃんの笑顔が可愛くて、近くに行きたかっただけだったのかもしれない。



 あの時の俺はどうにかして身体をはってでも知羽ちゃんを守りたくて。


 だけど俺は小さくて、擦り傷だらけになって、知羽ちゃんの身体の傷はちょっぴりだったけど、俺の身体がボロボロになった事で、知羽ちゃんに心の傷を負わせた気がする。



 そんな事が続き、それがきっかけかは分からないが、少しずつ、本当に少しずつだけど、知羽ちゃんが笑わなくなった気がする。


 周りを恐れて、生きている。

 そんな風にも見えてしまう。



 だけど、俺と、俺と2人っきりの時は、あの甘い笑顔で笑う事もあるんだ。


 俺だけがあの笑顔を知っている。



 知羽ちゃんの心の傷を和らげる事ができたのは俺だけだったのかもしれない。


 だけど、卑怯な俺は、あの甘い可愛い笑顔を独り占めしたかった。

 


 と、物思いにふけり過ぎて、意識がちょっと飛んでいた。


 知羽ちゃんに俺の腰に巻いてある上着の袖を握られた。

 またドキドキしてきて、腰にうっすら知羽ちゃんの感触が伝わる事で触れられている部分がジーンと熱くなってきた。


 美少年と知羽ちゃんの話は俺が物思いにふけっている間に随分進んだようだ。


『その力の源と言うのがな、ポジティブ、前向きな気持ちじゃ。逆にネガティブな気持ちは力が減ってしまうんじゃ。お主達にはこの中にポジティブな気持ちを貯めてきて欲しいんじゃ』


 力? チラッと聞いていたんだが赤い糸を強くしたりする力に前向きな気持ちがいるって事か?

 しかもネガティブな気持ちだと減ってしまう?


 そ、それって大丈夫なんだろうか?


 俺は前向きではあるけど、もちろんクヨクヨした所もある。


 知羽ちゃんは普通の子よりかなり大人しい。

 さっきも言った様に、俺以外の前ではあまり笑わないんだ。



 ポジティブな気持ちを貯めるなんて難しいんじゃないだろうか?



 俺の心配をよそに、知羽ちゃんが美少年から怪しげな玉を渡されていた。


 知羽ちゃん。


 そ、そんな怪しいもの貰っちゃダメだ。


 そう言わなければと思うのに、上手く言葉が出ない。


 知羽ちゃんが美少年から玉を受け取ると、その透明な球体は知羽ちゃんの掌の中に吸い込まれる様に消えていってしまった。


 知羽ちゃんは真っ青な顔をして、その玉を自分の掌から取り出そうと激しく腕や手を振っていたが、出てこない。



 不安そうな表情の知羽ちゃんの手を俺はギュッと握った。


 知羽ちゃんの小さな掌を握った事でまた俺の心臓は跳ねたが、俺はそんな事は気にせず、知羽ちゃんにおかしなものを押しつけた、美少年を睨みつけた。


 


 

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