第23話 えっ! ち、知羽ちゃん前だけ? 困るよ(優 視点)
知羽ちゃん、心配しないで。
そう思っていても、俺の顔には熱がどんどん溜まって来て熱くなる。
気がつくと目に涙も溜まってきてしまった。
知羽ちゃんが、泣きそうな顔をしているよ。
だけど、今、声を出したら、俺はみっともない声を上げてしまいそうだ。
知羽ちゃんが俺の腰に巻いている上着の袖から手を離し、自分のズボンのポケットに手を突っ込み、スマホを取り出した。
上からそっと覗くと、119番を押している。
きゅ、救急車を呼ぶつもりだよ。
ま、まずいよ、この訳がわからない身体の異常、なんでたか分からないけど病気や怪我じゃない気がするんだ。
慌てていた俺だったが、まだ胸の昂りは治まらず、身体が上手く動かなかった。
そんな時、俺より先に知羽ちゃんの行動に反応したのは、おじいさんの様な喋り方の怪しすぎる美少年だった。
『ここじゃ繋がらんわい。慌てなくても良い、この者は別に病気ではない。さっきも言ったじゃろ。ワシの光と滴にやられただけじゃ』
よ、良かった。
なんでか分からないけど電話、繋がらなかったんだな?
知羽ちゃんに、今の自分では上手く伝えれない。
大丈夫だと言っても説得力がない。
あの何者か分からない美少年が、言ってくれて助かったと思いホッとしたが、誰のせいだよと、やはり腹がたってきた。
美少年からの言葉を聞き、いつものは控えめで、のんびりめの、知羽ちゃんなのに。
全然違う雰囲気で勢いよく美少年に詰め寄る知羽ちゃん。
「さっきから、何、訳の分からない事言っているの? まあ、存在自体が訳が分からないけどさ?
病気じゃない? そ、そんな事、言ったって、こんな状態の優君を目の前にしたら、心配しない方が無理だよ!」
知羽ちゃん。
心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫なんだ。
それよりもそんなに怪しすぎる奴に近寄らないでくれよ。
『まあ、落ち着きなされ、ワシも思わぬ事態で、少し困っておるのじゃ、その少年の事もなんとかしてやるから、ワシの事も助けてくれんか?』
そうその美少年が知羽ちゃんに語りかけると同時に俺の頭の中にまた直接語りかけて来た。
【少年よ、今の現象はワシの、運命線と言って赤い糸をより強くする力があるんじゃが、それがちょっと過剰にお主の気持ちに反応した様じゃ。普通、一人の人物に少ししか使わないその力をお主が随分と吸いとってしまった】
ど、どう言う事なんだ?
俺があの美少年の怪しげな力をす、吸い取った?
な、何を言っているんだ。
俺にそんな力はない。
赤い糸?
それって女子達が好きな運命の赤い糸ってやつか?
も、もしかして、俺と知羽ちゃんが赤い糸で繋がれたと言う意味なんだろうか?
そんな風に俺が想像力を働かせていたら知羽ちゃんと美少年の話が先に進んでいた。
えっ? 話が進んでいて、ちょっと分かりにくいが、俺はあの少年の力を吸い取ったが、力をコントロールできていないからこんな身体の状態という事なのか?
うーん。ど、どう言う事だ?
【まあ、力を使いこなすには時間がかかるじゃろな】
使いこなせば、身体が楽になるという事か?
「使いこなすのはどう、し、たら良いんだ?」
俺は、何とかそう言葉を発しながら美少年を睨んだ。
【そうじゃな。ワシの事を助けてくれたら教えてやらん事もないぞ、まあ、やり方が分からなくても、お主の身体が、そんな状態になるのは本当に大事に思っていたり、心から気にかかっておる者に対してだけじゃ。だから、普通に友人とか、後、まあ大事には思っておるじゃろうが、親とかの前でも、多分、普通の状態で居れるじゃろ】
それって知羽ちゃんの前ではこうなってしまうと言うことか?
そんな、こ、困るよ。
そんな風に俺と頭の中で会話していた美少年、実際には知羽ちゃんとも声を出して会話していたみたいだ。
同時に二人と会話?
しかも、俺には頭の中に直接話しかけて気やがってるし。
どんな思考回路をしてるんだ?
普通の人間ではない事は確かだな。
『また、違う事を考えとるのぅ。まあいい。この事は他の者には言ってはならんぞ? ワシ、ワシはな。人との繋がり、まあ、そちらの世界では赤い糸とも呼ばれておるかな? 出会いなどの、きっかけ作り、その繋がりの強化、悪い繋がりの断ち切りなどを行う』
俺が考えこんでいたら、そう、美少年が知羽ちゃんに語りかけている所だった。
やはり、赤い糸はその赤い糸なんだな。
じゃー、やっぱり俺と知羽ちゃんも赤い糸で繋がっていて、その赤い糸の力が強く強化されたという意味だろうか?
なあ、おい、そう言う事なのか?
こいつ、肝心な事は全然教えてくれない。
勝手に期待してしまうじゃないか。
お前は一体、何者なんだよ?
『私は運命の糸の調整人じゃ』
何だ、それ。
だから、結局、どういう事なんだよ?
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