第22話 何? 私、一体、何されちゃったの?

 運命の糸の調整人?


 ......。



 頭が、思考回路が追いつきません。


「優君、大丈夫? 歩ける? とりあえず、ここから早く脱出しよ?」


 変わった子の相手している場合じゃないよね。

 お母さんや、優君のおばさん、おじさんも心配してるよね。


 チビ、チビも行くよ?



 私はチビのリードを少しだけ、引っ張りましたが、チビがびくともせず、美少年に向かって吠えています。


 尻尾を全開にしながら喜びを表しているようなので、もしかしたらこの人は悪い人ではないのかもしれないです。


 チビは結構賢くて、しっかり番犬するコなので誰にでも懐く訳ではないのです。


『だから、無視するでわない』


 その言葉を聞きながら、ちょっと考えた後、私はもう一度、美少年を見ました。



「だいたい、私達が何をすると言うの? 私達に出来る事はあるの? 私達は危ないことはしないし、人に迷惑をかける様な事もしないよ。......も、もしかして誰かの恋愛のて、手伝いでもするの?」


 私は、優君にずっと前から恋をしています。

 恋をするって、とても素敵な事です。



 はっきり言って、あの少年の言っている事は全然、信用できません。


 だけど、だ、だけど、もし、本当ならすごく素敵な事だと思いました。



 地味で何も取り柄のない私が、そんな素敵なお手伝いをできるなんて、ほ、本当でしょうか?


『運命の糸の調整は誰でも出来る事ではないんじゃ。だからお主達に直接手伝ってもらう訳ではない』


 美少年のその言葉を聞き、私はガッカリして肩を落としました。

 

 なんだ、違うんだ。



 私が落ち込んでいるのを見て、チビがペロっと私の指を舐めてくれました。


 私はリードを持っている方、今、チビに舐めらた方の手で優しくチビの頭を撫でると、チビが私の手に頭を擦りつけました。



 チビ、この人がおかしな人だったら私の事も優君の事も守ってね。



 そうやってチビの頭を撫でていると少し冷静になってきました。


 ちょっと待って下さい。やっぱり私達騙されているんじゃないでしょうか?



 私はまた、少し不安になり、チビの頭をもう一度撫でて、その反対の手で優君の腰に巻いてある上着の袖をまたギュッと握りました。


 

『運命の糸の調整には力をがいるんじゃ。さっきの光は、ワシがその光を練って力に変えておったのじゃ。滴はワシの分身だった訳なんじゃが、その力がその少年に吸収された事によって、不足してしまった』


 私が不安になっているのもお構なしに、美少年は喋り続けます。


 そんな事を言って、力というのが足りなくなったのは優君のせいと言いたいのでしょうか?


 やはり詐欺でしょうか?


 もし、この人が言っている事が、本当だったとしたら、そんな訳の分からない力を吸収してしまった優君はどうなってしまうのでしょう。



 それに、直接手伝わないなら何を私達にさせる気でしょうか?


『その力の源と言うのがな、ポジティブ、前向きな気持ちじゃ。逆にネガティブな気持ちは力が減ってしまうんじゃ。お主達にはこの中にポジティブな気持ちを貯めてきて欲しいんじゃ』


 と言って美少年から掌サイズの丸い透明な水晶の様な物を渡されて、私は優君の上着の袖から手を離し、恐々と受け取りました。


 それと同時にその玉の様な物は私の手の中に入っていき消えてしまいました。



 な、何?


 中に入っちゃたよ。

 気持ち悪い。


 何? 私、一体、何されちゃったの?


 私は怖くなって自分の手から出そうと、腕を数回、斜め下に向かって振りますが何も出てきません。


 優君は再び、私の手を握りしめて美少年を睨みつけていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る