第19話 俺に何が起こっている? うゔ 知羽ちゃん。可愛い(優 視点)
俺は正気を取り戻そうとしきりに頭を振る。
だけど、この光を見つめて、知羽ちゃんに触れていると、なんだか頭がボーとしてくる。
頭にモヤがかかったような何だか不思議な感覚だ。
『おい、おい』
何だこの声は、先程まで、音でしかなかった中性的な声が、今度はしっかりと声で聞こえた。
知羽ちゃんにも聞こえているのか分からないが、知羽ちゃんが声の方に引っ張られるように動きだし、俺の手を離そうとした。
危ない。
知羽ちゃん、危ないよ。
俺はとっさにそう思ったが、知羽ちゃんの手を握り返したのは先程と同じく俺の意思と言うよりか、勝手に身体が動くといった方が正しかった。
何故だか、いつもより自分の行動が、心のままに動いているといった感じだ。
恥ずかしい。
だけど、こんな風に男らしい行動をとりたいと思っていた俺は嬉しくもあった。
知羽ちゃんの顔、ちょっぴり赤いな。
ちょっと俺の事、意識してくれて、いるんだろうか?
友達はいないと思う。
本当はクラスの皆との橋渡しを俺がしなくちゃいけないんだけど。
そんな風に罪悪感にかられながらも、知羽ちゃんの小さな手、チラッと斜め下横に目線を移すと、ぷっくりした柔らかそうでほんのり赤い知羽ちゃんの頬が見える。
か、可愛い。
やはり、こんな可愛い姿、誰にも見せたくない。
俺の中で、またちょっと黒い感情が浮かんだ。
その時また薄緑色の眩しい光が俺の顔に当たった
。その光につられるように目が細まりボーとしてきた。
『おい、少女、そこの少女よ』
さっきの声だ。
知羽ちゃんの事を呼んでる。
何だ。
怪しい、怪しすぎる。
俺はぼんやりしてきた頭を正気に戻そうとしたが中々身体が言う事を聞かない。
変な喋り声の他に囁くような小さな歌声が聞こえた。
小さいけれど沢山の声が重なりハーモニーになっている。
妖精達の歌声を聴いている様だ。
聞き惚れそうになりまた頭がボーとしてきた。
『そこまで相手にされないと悲しいのだが......。』
その声が聞こえたと同時に俺達の周辺に変化が起こった。
フヨフヨと周りを浮遊し、空中に無数にキラキラと浮かんでいた水滴、みたいなものが一箇所に集まり始めた。
すごい勢いで動くその水達は水飛沫をあげ、その場所に飛んでいく。
水滴がかなり俺の顔にかかった時、更に俺の体温が上昇した気がした。
水と光が共鳴しあい、幻想的な光と水のコントラストが広がっている。
そして、その水達は、少しずつ少しずつ、形を作り、ひと? 少年の様な姿になっていった。
「ワン、ワン、ワンッ」
チビが吠えた事で俺のボーとした意識が一瞬戻った。
その、水で出来た物体は、水の様にユラユラと揺れていたが、色がどんどん濃くなっていった。
気がつくと俺と知羽ちゃんとチビの目の前に恐ろしく綺麗な少年が立っていた。
なんか、こいつ、何者だか知らないが、昔、知羽ちゃんが好きだったアニメキャラに似ているな。
俺がなるべく、知羽ちゃんと他の人との接触を避けていたというのに。
俺はうまく働かない頭でそんな事を考え、治らない胸騒ぎが何とかならないかと、溜息をついた。
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