第16話 俺の身体の中の変化。俺の中だけの静かな戦い(優 視点)
目の前の情景に、俺の身体は固まった。
何処からどうやって、こんな山奥の様な場所に繋がったというのか、俺、知羽ちゃん、チビは、多くの木々に囲まれていた。
カサカサカサカサっと木々は揺れる。
それは木々達が拍手をしているかの様だ。
結構長く歩いたとは思うが、こんな山奥に繋がる程じゃない。
まあ、ウチの近くはそんな都会でもないから、誰かの私有地か何かの山に繋がったと言う事か?
って、それよりも、この光だ。
黄色い光をベースに薄いピンクや緑色、このキラキラしているモノは水分みたいなものがフヨフヨと浮いている様にも見える。
この光。
この光はまずいんだ。
薄緑の光が一瞬俺の顔に当たった気がした。
まっ、眩しくて目が眩む。
俺は片手で、少し目元を押さえた。
そして、先程から自分が苦しめられている状況が、さらに酷くなる気がして、胸がざわついた。
ち、知羽ちゃんは大丈夫なのか?
心配になった俺は知羽ちゃんの方を向き、様子を観察した。
心の中までは分からないが不安そうな表情を浮かべている知羽ちゃん。
知、知羽ちゃん。
俺は身体も昔よりは大きくなったんだ。
色々なモノから少しでも知羽ちゃんを守ろうと、小学生にしてはある程度、身体を鍛えてもいるんだ。
ちょっと自分の状態に戸惑ってはいるけど大丈夫。
知羽ちゃんは俺が守るからね。
俺は自分の掌で、自分の硬い胸を押さえた後、知羽ちゃんの小さくて柔らかい手をギュッと握った。
だけど、そう思ったばかりなのに、自分の身体の変化に中々、ついていけない。
知羽ちゃんの柔らかい小さな手を握ると、彼女の体温が、自分に伝わって、自分の中の何かの器官、心臓? 脈か?
とにかく自分の身体の内部のモノが、ドクッ! と鳴った。
何とか同様せずにいるつもりだったが、その時、知羽ちゃんが、俺の予想していなかった行動にでたのだ。
知羽ちゃんは俺の手をギュッと強く握り返した。
俺は握り返された瞬間、身体中が燃え上がるように熱く感じて、身体を跳ねさせた。
だけど、知羽ちゃんの手を離す事は俺の手が拒否した。
どういう事だ?
自分の意志で手が動かないという訳ではなく、心の底で思っている事を身体が勝手に行動していると言う方がしっくりくる。
周りに浮遊している水分みたいなモノが再び、俺の頬に当たった。
更にこの幻想的な光を見ていると、なんだか頭がボーとしてきた。
不思議な音楽まで流れてきているそんな錯覚。
いや、本当に聞こえているのかもしれない。
心地良い、中性的な音の様な声が。
俺の頭の中は、なんだかフワフワとしてきた。
まるで宙に浮かんでいるような気持ちよさ。
なんだろう、甘い誘惑、という訳ではないが、身体が癒されるというか、また夢の中にいる様な錯覚におちいった。
そんな時、知羽ちゃんからキツく、ギュッと手を握り返され、再び身体が熱くなり、我に返った。
ダメだ。ダメだ。
俺がこんな風になってはダメだ。
俺がおかしくなったら誰が知羽ちゃんを守るんだ。
俺は正気を取り戻そうと頭を振った。
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