第15話 今の俺はヤバイんだ 知羽ちゃん(優 視点)

 俺の動悸はまだ治らない。




 枝のトンネルの、出口が、見えてきて、チビと知羽ちゃんがスピードを上げて歩き出した。


 


 チビが、まずスピードを上げ、その後、必死に早歩きをする知羽ちゃん。



 俺も急いで追いかける。


 青々とした大きめな葉が顔に当たる。


 冷たっ。


 少し水分を含んでいるかの様に滴が顔にかかって俺は顔をしかめた。


 


 



 俺はあのトンネルの、出口の先から見える光を見てから、なんだか変だ。



 





 今まで、どんなに気持ちが高ぶっても、態度には出さずにいられたのに。


 本当に変なんだ。


 


 



 あの光を見てから、なんか自分の中のありとあらゆる音、心臓、脈、口の中の唾液、それらがとても大きく聞こえだした。



 



 聞こえだした事によって、自分がどれだけ知羽ちゃんを意識しているか再確認させられた気がする。


 




 ドクッドクッドクッ。


 


 忙しなく俺の中を、

 そんな音が身体中に響く。


 


 理性が働かないのともまた違う。


 俺の身体はどうなってしまったんだ。


 


 俺が、そんな状況なのにだ、知羽ちゃんは相変わらず危なっかしい。



 今の俺は、少しでも知羽ちゃんに触るとドキドキしてしまうというのに......。

 

 だけど俺の中で知羽ちゃんが転びそうになるのを助けないなんて選択肢はない。



 



 あ! 危ない!



 



 また足元まで伸びた枝に足を引っかけた知羽ちゃん。


 俺は、慌てて、肩を支える。


 先程は、どうにも危なかったからお腹を掴んだが、それが、こんな感覚になってしまった今じゃなくて良かった。


 



 だけど、お腹でも肩でも腕でも、知羽ちゃんの身体が、俺の身体とは違い、ありえないくらい柔らかいのには変わりない。


 


 俺は自分の身体が熱く、熱を持ってきているのが分かったが、気づかないフリをした。



 


 感覚が鋭くなってきているから、自分の息も熱く感じてきていて、自分自身にも嘘がつけなくなってきていた。



 



 



 俺は元々、人にはあまり関心を持たない方だ。


 事なかれ主義と言うか争い事が嫌いで、勘違いした皆から優しいとよく言われる。


 本当は違うのに。


 

 


 そんな俺の近くには、人が多く集まった。


 女の子も近づいてくる事もあった。



 中には可愛い子もいたのかもしれない。



 何故って、俺の周りにいる男友達がそうやってはやしたてるからだ。



 だけど、俺は幼い頃から目が離せない幼なじみが側にいたし、彼女、知羽ちゃん以外はちっとも興味がなかった。


 



 意識を違う方に向けようとした俺は知羽ちゃんが転びそうになるのを支えながらも、知羽ちゃんとは、目が合わないように、知羽ちゃんの身体の気になる部分、肌が見えている部分はなるべく見ないように心がけた。

  


 そんな風にして、やっと枝のトンネルの出口を抜けると、驚きの光景が広がっていた。



 これは一体、どう言う事だ?

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