第12話 枝のトンネルで知羽ちゃんと(優 視点)

 あっ、ちょ、ちょっと待てよ。


 知羽ちゃんとチビが怪しげな枝に覆われた穴のようなトンネル? の様な所に入って行ってしまい、俺は慌てて追っかけた。



 慌てすぎて頭を打ちそうになった事は知羽ちゃんは気付いてないみたいだから内緒だ。


 近づきすぎて、もうちょっとで知羽ちゃんとぶつかってしまう所だった。



 周りは枝に囲まれていてかなり進みづらい。


 こんな所、入って大丈夫だろうか?


 俺が知羽ちゃんを守らないと。



 得体の知れない場所は、どんな危険があるか分からない。


 俺はなるべく、知羽ちゃんの近くを歩いた。


 木の樹液の匂いもするけど、こんなに知羽ちゃんの近くだと、どうしても知羽ちゃんからする甘い香りが気になってしまった。



 知羽ちゃん。


 こんなに近くでみたの久しぶりだな。


 ちょっと頬が赤いかな?


 ここ暑いもんな。



 ああっ、腕に抱えている上着が邪魔で仕方がない。


 知羽ちゃんが寒くなった時にと思って持ってきたけど、とりあえず今は必要ないな。


 俺は上着を手早く自分の腰に巻きつけた。



 木の枝が前に進むのに邪魔だな、知羽ちゃんの顔にも当たりそうだ。



 俺は知羽ちゃんの頭や顔を守ろうと、枝を腕や手の甲で避けた。


   

 こんな近くだと知羽ちゃんのつむじまで見える。


 知羽ちゃん。ちっちゃいよな......。

 あっ、俺が大きくなっただけか。



 早く知羽ちゃんの事が守れる様になりたいと色々頑張ったもんな。



 知羽ちゃんなら、成長途中の俺でも、腕の中にすっぽりと包み込めそうだ。



 知羽ちゃんの顔に葉っぱがかかりそうで、慌てて俺が防いだ時、俺の指に知羽ちゃんの息が少しかかって、俺の心臓がドクッと鳴った。



 ここが暑いからだろうか、頬が暑くなってきた気がした。


 枝の隙間から星や月の淡い光が見える。



 暗がりだが、知羽ちゃんの綺麗な、肩まである黒髪が見えた。

 光が少し当たって、すごく綺麗だ。



 横の髪から見えている丸い、色白だけどちょっとピンクくなった頬もマシュマロみたいに柔らかそうだ。

 触りたい。

 昔は簡単に触る事ができたのに。



 俺は変態だったんだろうか。



 こんなことを思うなんて。



 純粋な知羽ちゃんに俺の変態じみたこの考えは絶対知られてはならないと、そう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る