第11話 不思議な光
私はほとんど屈まなくていいけど、背の高い優君は結構屈みながら歩いています。
変わらず、かなり近くに優君の気配を感じ、ソワソワしてしまう私です。
枝のトンネルの、私の頭上の部分は、枝と枝の間に所々に隙間があり、その隙間から星や月の光が見えました。
なので、このトンネルを通っていても、不安よりワクワク感の方が増していました。
たまにチラチラと、葉や枝からかばってくれる優君の腕が見えて、やっぱりドキドキはしますが。
すぐ近くに優君が居ることが本当に心強いです。
こんな暗がりな所、普段の弱虫な私なら泣き出してしまう可能性もあったかもしれません。
「ワンっ」
その時、チビが大きく吠えました。
あっ、もちろん、チビが居るだけで、私は寂しくないよ?
チビが急に吠えたので、私は思っていた事にチビが不満を言っている様に、錯覚してしまい、心の中で慌てて言い訳をしました。
「ワンっ、ワンっ」
チビを見ると、トンネルの出口が見えたから吠えたのだと分かりました。
チビのブンブンの尻尾や、はしゃぎようから、チビが楽しそうなのが伝わってきます。
「おっ、やっと出口か? 幅は、小さいのに、やけに長いトンネルだったな」
そう言って優君は、私の肩と顔の間から、出口の向こうを見ようとしました。
だっ、だから優君、近いんだってば。
優君はこんなに近くても、なんともないんだろうか?
私はタダの幼なじみ?
そうだよね......。
優君の周りにはいつも可愛い女の子達がいたし、私と違ってドキドキなんてしてないよね......。
優君が女の子に近づくって、感じじゃなくて女の子から近寄ってくるって感じだったけど。
優君は誰にでも優しいから人気者なんだ。
私は、地味な存在。
慣れてないと、喋る言葉が思いつかない。
そんな私は面白くないのだと思う。
友達もいない。
クラスの人からは幸いな事にいじめられたり無視されたりはしていない。
人から逃げてしまうのはいつも私だった。
その時です。
トンネルの向こうには何故か明かりが見えました。
優君もビックリしたのか、私の肩に手を置きます。
触られた事に驚いた私は、思わず、ビクッと身体がはねました。
「あ、わりぃ」
そう言って優君は私の肩から手を離します。
なんだか、名残惜しさを感じた私です。
再び、光の方に目線を移しました。
もう、夜だし、明かりなんて、星や月以外は無いはずなのに。
も、もしかして知らない人の家に入り込んでしまったのだろうか?
だけど、なんだろう。
その明かりを見ていると、人工的な光には見えず、何だか心が温かく、優しくなれる様な不思議な感じがしました。
私の卑屈な嫌な心を優しく包んでくれるような優しい光でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます