第9話 チビと優君と散歩中。 優君、ち、近い。

 散歩コースは日によって違います。


 決まったコースを行く事もありますが、チビが時おり冒険心を出し、初めて行く道に行きたがるのです。



 実はそれで迷子になるかと不安になった事もありました。


 だけど、知らない所に行ってもチビは家までの道が分かるみたいでちゃんと家にたどり着くんですよね。



 ちょっと私はチビに期待しました。


 いつもの散歩道だと比較的早く散歩が終わってしまいます。


 だけど初めての道の場合、少し長くなることが多いのです。



 随分、日が陰ってきました。


 星も一つ二つと見えてきて、いつも見ている散歩風景が優君と一緒だと、また違う景色に見えます。



 沈黙の中にチビの鼻息が響きます。


 


「ははっ、チビ嬉しそうだな。尻尾、ブンブンじゃん。可愛い。チビの尻尾は本当、表情豊かだよな」


 そう言って優君が不意に思わずと言った感じでとても優しく笑い声をあげました。


 私は優君の優しい表情に見惚れそうになりながら


「そうだね。散歩、嬉しいんだね。草の匂いとかに他のワンコの匂いとかも染み付いてたりするのかな?」



 何とか言葉を繋ぎました。

 何だか久しぶりに自然に会話できた気がします。


 


 チビのおかげです。



 そんな風に思っていたら、チビがものすごく細い道に向かって進み出しました。


 こんな細い所を通るの? チビ、、、。




 そこは子供、一人ぐらいしか通れないぐらい細くて両端のブロック塀から木がトンネルになるぐらい、はみ出しています。


 チビは簡単に通れそうですが、私と優君は屈んだりしなくちゃ難しそうで、もう道と言うより隙間という感じです。



 優君も少しだけ困った顔をした様に思います



 だけどちょっと楽しそうにも見えます。



 そう言えば優君は秘密基地とか大好きでした。



 

 だけどちょっと危ないと思った私は順路を変えようとチビの散歩ヒモを引っ張りました。



 チビ中々、力が強いです。


 私、引きづられてしまいます。


 チビが入って行ってしまい私も中に入ってしまいました。


 


 考える暇もなく私も屈みながら中に入って行きました。



「あっ、おい、待てよ」

 私の後ろには慌てて優君が続きます。




 ち、近い。



 優君の息遣いが聞こえて何だかドキドキしました。



 ドキドキしたけど、木のトンネルのようになっているその細い路地は何処に繋がっているんだろう。


 




 少し不安だったけど、背中に優君の気配を感じて安心感もありました。



 

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