第7話 ドキドキの散歩道

「行ってきます」


 優君が家の中に向かって声をかけています。

 

 中から、おばさんの声がちょっとだけ聞こえます。


 何と言ったかは聞こえませんでしたが、おばさんの声を聞くのも久しぶりです。


 




 優君の格好は先程と変わっていません。

 半袖のTシャツと短パンです。


 小脇に上着を抱えています。


 


 本当に一緒に散歩、行くんだ......。


 隣を歩くのは、通学を一緒にしているので、いつもの事です。



 だけど、何だか私はワクワクしていました。


「行くぞ」


 優君が歩き出し、チビと私も歩き出しました。

 チビが所々で立ち止まりクンクン匂いを嗅いでいます。


 立ち止まるので優君を近くに感じます。

 緊張してしまいます。




 隣には優君が居ます。


 沈黙は辛いよね......。

 何、喋ろう。


 学校の行き帰りは、歩いているから喋ってなくてもそんなに気になんないけど。



 チラッとだけ横顔を見ます。

 昔は何だって喋れたし、いつでも側に居たのに、遠い存在になってしまった。


 そう思っていました。


 やっぱり、格好良い。

 ちょっと見惚れてしまいます。


 優君がこちらを向き目が合いました。

 

 私の顔が赤くなってるかもしれないです。



「散歩さ、行く時、声かけろよ。チビ居てもさ、暗いと危ないよ、お前すぐ転ぶし」



 私は急に声をかけられて、身体がビクッとしました。

「えっ……?」


 な、何て言った?


 神様、何かのご褒美ですか?


 これはもしや夢ですか?


 思わず私は自分の頬をつねります。


「聞いているのか?」


「う、うん。わ、分かった」




 慌てて答えた私は何だか素っ気ない答えになってしまいました。


 心配してくれてたんだ。



 嬉しい。




 やっぱり優くんは優しいです。



 あっありがとうって言わなきゃ。


「あっ、」


 ありがとうと言おうとしたらチビが、すごい勢いで歩き出してしまいました。


 あー、タイミング外しちゃった。



 優君、優しい。


 そう思う反面、昨日の図書室での出来事が頭をよぎって、心がチクッと痛みました。

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